月最終話 君からの贈り物

そして、愛の日当日…―。

楓さんに呼び出されて、彼の部屋へ向かってみると……

○○「……!」

テーブルの上に、先日会場で見た、仕掛けつきリボンのラッピングの箱が置かれていた。

楓「君、これ気になってたでしょ?」

驚く私を見て、楓さんは満足そうに微笑む。

○○「……そう、ですけど……でもどうして……」

楓「どうしてって……」

楓さんは呆れたように苦笑いを浮かべ、肩をすくめた。

楓「まあ君は、そのへん壊滅的に鈍いからね。気づいてないか」

○○「え……?」

楓「元々、愛の日に贈り物をしようと思って、君を呼んだんだよ。 インスピレーションなんかは全部、口実」

○○「楓さん……」

あまりに驚いて、それ以上の言葉が上手く出てこない。

(そうだったんだ……よかった)

昨日までの胸のざわつきが、心地よい鼓動の音へと変わっていく。

楓「どうしたの?あからさまにほっとしたような顔してるけど」

○○「い、いえ……!」

楓「まあいいや。ほら」

楓さんはそんな私を見て、改めてプレゼントの前まで促してくれる。

楓「いいから、開けてみて」

○○「はい……」

胸を高鳴らせながら、リボンにそっと手をかける。

(なんだかほどくのがもったいないくらい……どんな仕掛けなのかな?)

リボンを解き終わり、丁寧にゆっくりと箱を開くと…―。

○○「……!」

楓「へえ……」

中から、たくさんのハート型の風船が飛び出してきた。

赤や桃色の風船が、いっぱいの想いを伝えるかのように部屋を埋め尽くしていく。

○○「素敵……!」

箱の中にはさらに、ハート型のチョコレートがたくさん入っていた。

楓「へえ、こんな仕掛けだったんだ……ちょっと子ども騙しっぽかったかな。 でも、君は好きなんじゃない?」

楓さんは、悪戯っぽい視線を私に向ける。

○○「!どういう意味ですか…―」

楓「どう?俺の気持ち、伝わった?」

○○「はい……あの、でもすごく驚きました……他の、誰かに贈ると思ってたので……」

思わず本音を漏らしてしまうと、楓さんがにやりと笑った。

楓「今日までの流れで、何でそんなこと思うかな。君って本当に可愛いね。 嫉妬……してたってことだよね?」

○○「あ……っ」

ゆっくりと私に近づいてきたかと思えば……

ぐっと腰を抱き上げて、そのままベッドへと運んでしまった。

○○「か、楓さん……!」

恥ずかしくて逃れようとすると、後ろからしっかり抱きしめられて身動きが取れなくなる。

ぴったりと体が密着して……

(すごく恥ずかしい……)

楓「何慌ててるの?ふふっ……ねえ、俺がこれだけ想いを伝えたんだから、君もちゃんと返事しないとね。 返事……聞かせてくれる?」

○○「……それは……」

(もちろん、好き……だけど)

○○「……嬉しいです。私も楓さんを……」

恥ずかしくて、その先の言葉が紡げない。

すると楓さんは、楽しげに笑って……

楓「言えないの?仕方ないなあ……。 言葉で伝えるのが難しいなら、君からの贈り物でもいいけど?」

○○「あ……!私、チョコレート買えてないんです。 楓さんが、他の人にあげるんだって思ったら、買えなくなっちゃって……」

(そうだった。私、勝手に勘違いして……せっかく楓さんはこんなにしてくれたのに)

楓「そうなんだ?けど、俺が言った君からの贈り物はチョコレートのことじゃないから問題ないよ」

○○「っ……!」

そっと、胸元のリボンに手をかけられて、ひときわ大きく鼓動が打ち鳴る。

楓「だって、さ……」

耳元に吹きかけられる熱い吐息を感じながら、楓さんの甘い声が鼓膜に響く。

楓「ラッピングをほどくと……相手の愛が伝わるんだもんね?」

○○「……!」

胸のリボンがゆっくりとほどかれていくけれど…―。

それと同時に私の想いもいっぱいに溢れ出しそうな気がして、恥ずかしくて何も答えることができない。

甘い香りが漂う、愛の日の夜…―。

私はただ、楓さんの優しい手元に、身を委ねることしかできなかった…―。

おわり。

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