月最終話 希望の口づけ

??「お、きたきた」

陽気な声が聞こえて、顔を上げると…-。

DJ「いらっしゃい」

ステージの上のDJブースから、一人の男性が笑顔でリカさんに手を振っていた。

リカ「来たよ。招待ありがと」

DJ「ははっ、まさか本当にお姫様を連れてきてくれるなんて。悪い男だねえ」

(この人がリカさんお友達……)

派手な照明にまだ少し圧倒されつつも、その人当たりのよい笑顔にほっとする。

DJ「お姫様。ようこそいらっしゃいました。是非楽しんでってくださいね」

そう言って、彼は瓶入りのカクテルを私達に手渡してくれた。

リカ「ん? これは……」

DJ「お前、これ好きだったろ? さあ、姫様もどうぞ。 こんな陽気なパーティが開催できたのも姫様のおかげだ。改めて、ありがとうございます」

〇〇「いえ、こちらこそありがとうございます」

笑顔で促され瓶を合わせると、少し硬くなっていた心が解けていく。

(皆、本当に楽しそう)

改めてフロアを見渡すと、集まった人達の弾けるような笑顔が溢れていた。

(嬉しいな……)

その光景に温かな幸せを感じていた時…-。

DJ「そうだ、せっかくだから上がっていきなよ」

リカ「は? ちょっ、待っ……!」

〇〇「リカさん!?」

友達に手を引かれ、リカさんがブースの方へ引っ張られていく。

(あのリカさんが…-)

突然の出来事に目を瞬かせていると……

DJ「お姫様はこっち。楽しんで!」

ブース前のスペースへ行くよう促された。

(……リカさん、大丈夫かな)

私は言われた通りにブース前に行って、顔を上げる。

すると…-。

DJ「さて、今夜のスペシャルゲストの登場だ! チョコレートの国・ショコルーテの王子様、リカ!」

その紹介に、会場が一気に湧いた。

リカ「おいおい……」

リカさんは困ったように苦笑すると、ちらりと私の方に視線を向ける。

(どうするんだろう……リカさんって、DJできるのかな?)

まだ戸惑う気持ちはあるものの、不意に生まれた期待に胸が膨らむ。

そんな私の気持ちが伝わったのか、彼は仕方ないというように息を吐いて…-。

リカ「あ……まあ、せっかく盛り上がってるし、ちょっとだけ。 今日はいろんな奴がいるみたいだから、わかりやすいのにするな」

慣れた手つきでヘッドフォンを耳にあて、ターンテーブルのセッティングを始めた。

リカ「それじゃ、楽しんで」

彼が指を滑らせた瞬間、会場に軽快な音楽が流れ始める。

(この曲、すごく格好いい……!)

リカさんが選ぶ曲は、クラブに馴染みのない私でも楽しめる曲ばかりで……

リカ「……」

リズムを取りながら機材に触れるリカさんにつられ、自然と私の体も動いていた。

(こんな体験……リカさんとじゃないとできない)

(リカさんはいつだって簡単に、私を新しい世界へ連れ出してくれる)

音楽とともに高まっていく気持ちを胸に、彼を見つめる。

すると、それに気づいたようにリカさんが私に視線を移し…ー。

リカ「っ……」

屈託のない優しい笑顔が向けられて、心臓がひときわ大きく跳ねた。

会場が熱に包まれる中、リカさんがDJブースからフロアへと降りてくる。

そして私の顔を見るや否や、彼はほっと息を吐いた。

リカ「さすがに焦った……でも、お前もまあ、悪くなかったろ?」

〇〇「悪くないどころか、すごく素敵でした!」

リカ「そりゃどうも」

普段あまり見ることのない無邪気な笑顔につられ、私も自然と口元が緩む。

リカ「ふっ……お前と夜遊びすんの、楽しいな。 まさかこんな日が来るなんて思ってなかったけど」

〇〇「どういう意味ですか?」

リカ「いや。こうやってお前と過ごすなんて、最初は想像できなかったから。 だって、お姫様を夜遊びに誘うなんて……怒られるかと思ってた」

〇〇「そんな……」

首を横に振ると、リカさんの手が私へと伸びてきて……ふわりと髪を撫でられた。

〇〇「あの、リカさん……」

リカ「何?」

ドキドキと、これ以上ないくらいに胸が高鳴っている。

楽しくて、嬉しくて……そして少し、恥ずかしい。

想いが溢れて止まらなくて、気づけば自然と口を開いていた。

〇〇「私、リカさんといるとドキドキして、すごく楽しくて…-」

(だから……)

〇〇「これからも、いろいろな世界をリカさんと見たいです」

背伸びして、リカさんの唇にそっと自分の唇を重ねる。

リカ「…-!」

そっと重なった唇が、じわじわと熱を帯びた。

リカ「へえ……」

頭の後ろを引き寄せられ、今度は彼から口づけられる。

その瞬間、賑やかなフロアの音は消え失せて……

まるでリカさんと二人きりの世界へ連れ出されたような、そんな感覚を覚えたのだった…-。

おわり。

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