月最終話 甘くて幸せな魔術

夜空を、島の光が色鮮やかに照らしている…-。

人々の明るい笑い声も今はどこか遠く、私はミヤを見つめていた。

ミヤ「……今日、〇〇ちゃんを誘えてよかった。 このワールドサロンはキミのためのワールドサロン。キミと過ごしたい人はきっとたくさんいるから」

〇〇「ミヤ、私は…-」

そっと、ミヤの人差し指が私の唇に添えられる。

ミヤ「……聞いて?」

いつもより艶めいた声が胸に甘く響き……私は開きかけた口を閉じた。

ミヤ「キミの笑顔は、皆を幸せにする。オレもそのうちの一人。 でも……オレ、キミのことが好きだって気持ちは誰にも負けたくない」

彼の手が、今度は私の頬を優しく包み込む。

ミヤ「〇〇ちゃんのことが好き。〇〇ちゃんにすっごく感謝してる。 きっと、誰よりも」

〇〇「ミヤ……」

そっと私の頬からミヤの手が離れたかと思うと……その手が淡い光をまとい始めた。

ミヤ「それを、ちゃんとした形で伝えたくて。 ……だからね」

(え……?)

私の返事を待つことなく、ミヤが魔術の詠唱を始める。

そして……

ミヤ「考えたんだ。今日っていう特別な日にふさわしい……とっておきの伝え方!」

〇〇「……!」

彼の手から色鮮やかな光が放たれたかと思えば、目の前に、ふわふわのクリームがたっぷりとのったケーキのタワーが現れた。

〇〇「わぁ……!」

ミヤによって作られた大きなケーキを見て、私は思わず感嘆の声を上げる。

ミヤ「特別な日には、やっぱりケーキ……って、ちょっと単純すぎるかな?」

甘い香りが鼻腔をくすぐり、胸いっぱいに幸せな気持ちが広がっていった。

〇〇「そんなことないよ。ミヤ、本当にすごい……!」

ミヤ「驚くのは、まだまだ早いよ!」

彼の指から次々と光が放たれて、おいしそうなお菓子がいくつもいくつも現れる。

きらきらと輝く光に包まれているケーキやお菓子は、とても華やかで……

(見ているだけで、幸せな気持ちになれる)

(まるで……ミヤみたい)

目の前の光景に見とれている私に、ミヤが魔術の力で作ったスプーンを差し出す。

ミヤ「〇〇ちゃん、どうぞ召し上がれ」

(こんなに綺麗なケーキを食べちゃうのは、なんだかもったいない気もするけど……)

〇〇「いただきます」

私は、ふわふわと浮かぶケーキの生クリームをひとすくいして口に含む。

〇〇「……おいしい!」

うっとりするほど優しい甘みが広がり、私は思わず笑みをこぼした。

ミヤ「よかったら、クッキーやマシュマロも食べてみて」

〇〇「うん」

返事をするとすぐに、魔術の力によって浮いていたクッキーやマシュマロが、まるで吸い込まれるように私の手の中へと下りてきた。

(クッキーもマシュマロも、私好みの甘さで……本当においしい)

ふと視線を感じて見上げると、ミヤが優しく微笑んでいた。

ミヤ「これがオレのなりの感謝の気持ち。喜んでもらえたかな?」

〇〇「うん。今日一日、ミヤと一緒に過ごせて……すごく楽しくて、嬉しかったよ。 ミヤが部屋から連れ出してくれなかったら……きっと一人で緊張したまま過ごしてた。 こんなに楽しい気持ちで一日を過ごせたのは、ミヤのおかげ。 本当にありがとう。明日のスピーチ、頑張るね」

彼のおかげで、不安や緊張はすっかり消えていて……

そんな私を、ミヤは満面の笑みを浮かべながら見つめていた。

ミヤ「あ~もう! キミって本当……!!」

そこまで言うと、ミヤが勢いよく私の体を抱きすくめる。

〇〇「! ミ、ミヤ……?」

ミヤ「オレが喜ばせるって言ってるのにさ。どうしてそう、かわいいことばっかり言うのかな。 ずるいよ、もう……」

突然縮まった距離に、恥ずかしさや嬉しさがない交ぜになったような気持ちになったけれど、頬を擦り寄せてくるミヤが愛おしくて、私は彼の体をそっと抱きしめ返した。

そうして少しの間、お互いの愛情と温もりを確かめ合っていると…-。

ミヤ「あのね、キミがいたから今のオレがここにいるんだよ? オレの方こそ……大切な気持ちをたっくさんくれて、ありがとう」

〇〇「ミヤ……」

ミヤの頬は、先ほどよりも赤みを増していた。

そんな彼への想いを静かに噛みしめていた、その時……

ミヤ「へへっ。これからもよろしくね。 オレの気持ちは、何があっても絶対に変わらないから」

〇〇「うん。私も、ずっとミヤが大好きだよ」

(これから先も……ずっと)

夜を迎えたワールドサロンには、大小さまざまな明かりが灯っている。

その中でも、とびきり優しい魔術の光に包まれながら……

私は最愛の彼と、想いを確かめ合うのだった…-。

おわり。

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