空を駆ける星々を、私達はただ静かに眺めていた。
〇〇「綺麗……」
アヴィ「……」
アヴィが私の手を引き、ゆっくりと歩き出す。
〇〇「アヴィ?」
アヴィ「せっかくだ。近くで見ようぜ」
手を引かれるままに、私は彼の後を歩いた。
〇〇「うん……」
遠く聞こえる管弦楽の柔らかな音色が、そっと私の背中を押してくれているような気がした…-。
…
……
飛空艇から眺めると、さっきよりも星々に手が届きそうで……
触れようと思わず伸ばした手に、アヴィの手が重なる。
〇〇「アヴィ……」
アヴィ「……」
アヴィは何も言わないまま静かに笑うと、夜空へと視線を戻した。
アヴィ「すげえな」
〇〇「うん……」
無数の流星群が、城の上空に踊るように降り注いでいる……
アヴィ「ごめんな。困らせちまって」
〇〇「え?」
アヴィ「お前はトロイメアの姫様なのに。 けど、これからも俺はお前のこと、傍で守ってやりたいんだ。 特別とかじゃなくても……さ」
(特別じゃ……ない)
告げられた言葉が、私の胸を苦しくさせる。
だから…-。
〇〇「……アヴィの笑顔は、私にとって特別だよ」
アヴィ「〇〇……」
彼の目をまっすぐに見つめて、心からの想いを告げた。
〇〇「アヴィの想いと私の想いは、同じなんだよ……」
アヴィの手を取って、そっと両手で包み込む。
そこからこの想いのすべてが届けばいいのにと、少しもどかしいような気持ちになる。
〇〇「アヴィが笑うと、いつも力が湧いてくる」
(大切なだけじゃない。望んでいいのなら、ずっとこれからも一緒にいたい)
〇〇「大好きだよ。だから……傍にいて。 アヴィがいないと、私…―」
心では上手く言えるのに……言葉にしようとすると、胸がいっぱいになって形作れない。
アヴィは、そんな私を見て優しげに笑って…-。
アヴィ「〇〇」
力強く抱き寄せられると、彼の胸に頬が触れた。
アヴィ「……ありがとな。充分だよ」
耳元で囁かれて、溢れる想いが涙になってこぼれそうな気がした。
胸に顔をうずめると、アヴィの香りに包まれているようで……
アヴィ「そんなしがみつかなくたって、離れてなんかいかねえよ」
〇〇「うん……」
もう一度確かめるようにそっと顔を押しつけた後……ゆっくりと、彼の顔を見上げた。
〇〇「私……アヴィの言う通り、皆の笑顔が大好き。 大切だから守りたいって思う……だけど、アヴィ。 アヴィにだけは……甘えてもいいかな?」
そう言うと、アヴィはこの上なく幸せそうに笑みを深めた。
アヴィ「……当たり前だろ」
しっかりと、彼が私を抱きしめる。
逞しい腕に、アヴィの優しい匂いに……泣きそうなくらい胸が震えた。
アヴィ「……なあ。 キス……していいか?」
彼の手が、うかがうように私の頬を滑る。
〇〇「っ……」
頬が熱を帯びるのを感じながら、それでも静かに頷くと…-。
【スチル】
アヴィは、触れるようにそっと私の唇を奪った。
やがて遠慮がちに離れた後、わずかに笑みを浮かべる。
そして…-。
アヴィ「お前が好きだ。ずっと傍にいる。お前の傍に……」
〇〇「私も……」
再び重なり合う唇は、熱を持って深く互いを求めた。
想いを確かめるように、離れそうになってはまた吐息ごとに奪われる。
〇〇「ん……」
長い口づけに心は酔いしれ、求めるようにアヴィの胸に手を重ねた。
アヴィ「〇〇……」
熱を残して離れていく唇を、私はたどるように見つめた。
そっと頬を撫でられると、指先が触れる場所から熱が灯っていく。
アヴィ「お前は時々、無理に笑おうとしたりするけどさ。俺の前では泣いたっていい。 俺の笑顔がお前の力になるなら、いつだって笑っててやるから」
そう言って……アヴィは旅の途中、いつも私にそうしてくれていたように優しく微笑む。
この笑顔をこれからもずっと見つめていたいと、心からそう思った。
〇〇「アヴィ……うん」
アヴィ「どんな時も……お前が必要とするのが、俺であってほしい」
〇〇「ありがとう。すごく嬉しい」
幸せが心に満ちて、頬がほころんでいく。
〇〇「ずっと一緒にいて。アヴィがいてくれるなら、どこまでだって歩いて行ける気がする」
アヴィ「……ああ。 どこへだって、俺が連れて行ってやる。お前が望む場所へ…-」
囁きは微かに、けれど強く……永遠の誓いのように胸に響く。
(大好き……)
城の上空を、煌めく星が弧を描きながら流れていく。
それはまるで、未来へ架かる橋のように思えた。
アヴィと一緒に歩んでいく、幸せな未来への…-。
おわり。