天窓から差し込む星の光が、妙に明るく見える…-。
(私、プロポーズされた、よね?)
私にお構いなしに、アザリーさんは、何やらドレスのデザイナーの話をしているようだった。
(……アザリーさんは、すごく素敵な人だって思うけど……)
(やっぱり、いきなり結婚するのは無理だってちゃんと言わなきゃ)
〇〇「アザリーさん。あの……。 さっきのプロポーズの件なんですけど……やっぱり、ちょっと唐突過ぎるというか…―」
アザリー「大丈夫だ」
私の手を、アザリーさんが力強く握る。
アザリー「いきなり王族になるのは不安かもしれないが、安心しろ。うちの国はいい国だぞ」
(……あ、そっか。そういえば私、まだ自己紹介もしてなかった……)
何からどう話してよいものか思案する私に、アザリーさんが満足げに微笑みかける。
アザリー「今日のパーティは、僕達を引き合わせるために開かれたんだな……」
アザリーさんは沈黙を肯定と受け取ったのか、私の手の甲に優しくキスを落とした。
〇〇「……!あ、あの……」
アザリー「さあ、そうと決まれば早く帰ろう! ああ、いや、ティアラをもらってからの方がいいか」
〇〇「い、いえ、そうじゃなくて、その……!」
アザリー「ああ、今日はなんていい日なんだ! 君に出会えたこの日を、わが国の祝日にしよう!」
カリム「アザリー様、おめでとうございます」
最後の砦だと思っていたカリムさんが、感涙にむせび泣きはじめる。
(どうしよう。これじゃあ本当に止める人が……)
〇〇「……ちょっと待っ……」
顔を上げると、アザリーさんが満面の笑みを浮かべながらこちらへと近づいてきていた。
〇〇「え、えっと……アザリーさん?」
少しずつ後ずさっていた私は、ついに壁際へと追い詰められてしまう。
〇〇「アザリーさん。 そ、その、ちょっと待っ……」
アザリー「待てない」
アザリーさんは、私を引き寄せ、壁に手をついた。
私を見つめる彼の目はどこまでも真っ直ぐで、こんな時なのに、胸がときめいてしまう。
アザリー「決めたから。 ……〇〇は、僕のものだって」
【スチル】
彼の長い指が私の顎を持ち上げ、唇がゆっくりと近付いてくる。
〇〇「ん……っ」
そっと触れた唇が一度離れ、もう一度私の吐息を奪う。
(言わなきゃいけないのに……)
顎を持ち上げていた指が首の後ろに回された後、気付けば私は彼の腕に抱かれていた。
アザリー「〇〇……」
その声が驚くほど優しくて、私は思わず言葉を失ってしまう。
そして……
アザリー「さあ、帰ろう」
アザリーさんは、私の耳元でそっとささやく。
彼の髪は風の香りがする……私は何故か、そんなことを思っていた…-。
おわり。