急遽参加を決めた夜会で、突然やってきた運命の出会い…-。
僕の心は、まるで春が訪れたように浮かれていた。
(とびきり華やかなドレスを用意しなければ……)
(結婚式は来月だ。準備を急がなくては……)
きたる〇〇との結婚式に向けて、僕はカリムと話を詰めていく。
すると……
〇〇「アザリーさん。あの……」
少し遠慮がちに、彼女の口が開いた。
(む? シンプルなドレスの方が好みだったかな?)
僕は〇〇の意見を聞こうと、彼女の方へと向き直る。
しかし……
〇〇「さっきのプロポーズの件ですけど……やっぱり、ちょっと唐突過ぎるというか……」
(なんだって?)
(まさか……この僕にプロポーズされて、ためらっている?)
彼女は申し訳なさそうな顔で僕を見ている。
(……ああ、そうか! わかったぞ)
(僕としたことが、少し配慮が足りなかったようだな)
アザリー「大丈夫だ」
僕は安心させるように、〇〇の手を握った。
アザリー「いきなり王族になるのは不安かもしれないが、安心しろ。うちの国はいい国だぞ」
自然と、握った手に力が入ってしまう。
(どうやら、嬉しさで言葉も出ないようだな)
(その姿も、本当に綺麗だ……)
無言でうつむく彼女を見つめながら僕は運命の出会いに感謝した。
アザリー「今日のパーティは、僕達を引き合わせるために開かれたんだな……」
(きっと国の者達も、君を連れ帰ったら大喜びすることだろう)
僕は静かに、溢れんばかりの幸せを噛みしめる。
(……君も、僕と同じ気持ちのようだな)
黙ったままうつむいている〇〇の手を取り、その甲にそっと唇を寄せた。
〇〇「……! あ、あの…―」
(この手も、透き通るような瞳も、桃色に輝く唇も、すべて僕のもの)
(これ以上の幸せが、あるものか……)
僕は再び、例えようもないほどの幸せに酔いしれる。
(……こうしてはいられないな)
アザリー「さあ、そうと決まれば早く帰ろう! いや、ティアラをもらってからの方がいいか」
(コロナが誇るティアラの輝きも、君の美しさには勝てないだろうが……)
(今日という日の記念に持ち帰らせてもらうとしよう)
〇〇「い、いえ、そうじゃなくて、その……!」
(本当に僕はついている!)
(何よりも素晴らしい宝を見つけたぞ!)
アザリー「ああ、今日はなんていい日なんだ! 君に出会えたこの日を、わが国の祝日にしよう!」
カリム「アザリー様、おめでとうございます」
その声に視線をやると、カリムの頬を涙が伝っている。
(カリムにも、長らく心配をかけたな)
(しかし、大丈夫だ。僕は必ず幸せになるぞ)
(やっと巡り会えた運命の人と、必ず……)
僕は〇〇の方へと向き直り、ゆっくりと近づく。
〇〇「え、えっと……アザリーさん?」
彼女が、なぜか一歩後ずさる。
(そうか……きっとこういうことには慣れていないんだな)
(大丈夫だ。男の僕に、すべてを任せてくれ……)
〇〇との距離を、一歩ずつ縮めていく。
そして彼女の背中が壁にぶつかったその時……
〇〇「アザリーさん。そ、その、ちょっと待っ…―」
アザリー「待てない」
僕は彼女を引き寄せ、壁に手をついた。
アザリー「決めたから」
(理屈じゃない)
(この心が、体が、僕のすべてが……君を欲している)
アザリー「……〇〇は、僕のものだって」
(だから君のすべてを、僕は奪う…-)
〇〇「……っ」
そっと〇〇の顎に手を伸ばし、想いを込めて優しく口づける。
その瞬間……
(甘い……な。こんな気持ちは初めてだ)
顔をわずかに離して、唇に残る甘さに酔いしれた後……
僕は再び、彼女の吐息を奪う。
(この幸せを知ってしまっては……)
(もう、君なしでは生きていけそうにないな)
顎に添えていた手を彼女の首の後ろへと回し、強く抱きしめる。
(だから君には、責任を取ってもらうとしよう。これから、ずっと……)
(そして約束しよう。僕も、一生をかけて責任を取ると)
アザリー「さあ、帰ろう」
耳元でそっと囁くと、彼女の体がいじらしく震える。
こうして僕は、光に満ちた二人の未来に思いを馳せながら……
青白い月が見守る中、最愛の彼女と共にサリューシャを目指したのだった…-。
おわり。