楽隊がラッパを吹き鳴らし、軽やかな音色と共にパレードを引っ張る。
男の子「ママ! みて、キレイだよー」
子ども達は無邪気な笑顔を浮かべ、舞い散る紙吹雪に手を伸ばす。
(皆、楽しそうな笑顔……)
華やかなパレードは続き、私達の馬車が広場へさしかかった時……
サイ「馬車を止めてくれますか」
不意に、サイさんが御者の方に声をかけた。
(どうしたんだろう……?)
予定にないことだったので、驚いてサイさんの顔を見つめた。
広場の中央で馬が歩みを止めると、観衆がいっせいにこちらへ注目する。
サイ「◯◯……」
サイさんは私の手を取り、馬車の上で立ち上がった。
そして、深く息を吸い込むと……
サイ「この場にお集まりいただき、ありがとうございます」
よく通る涼やかな声で、観衆に語りかけ始めた。
サイ「名誉あるプリンスアワードにお招きに預かり、そしてパレードに参加できることは身に余る光栄です」
ひとりひとりの民に語りかけるよう、サイさんはゆっくりと言葉を紡いでいく。
サイ「この世界が、誰にとっても生きやすく……。 すばらしい夢を抱き、実現できる場所であるように」
言の葉に祈りを込めるように、サイさんは胸に手を当てた。
サイ「サフィニアの王子として、力の限りを尽くすことを……。 この場にお集まりの皆さんと、トロイメアの姫の前で誓います」
(サイさん……!)
沿道の民「いいぞー! サイ王子ー!」
沿道の民「サイ様、なんて凛々しいお姿……!」
サイさんの宣言を受け、広場は大歓声に包まれた。
王子としての誇りを胸に、堂々と振る舞うサイさんの隣で、想いが溢れそうになる。
(サイさん、よかった……)
サイ「……」
自信を取り戻したサイさんと、温かな視線を交わした。
サイさんは私を支えるように、そっと座席へ腰を下ろす。
サイ「さあ、パレードの続きをしよう」
◯◯「はい……」
私はサイさんと手を繋いだまま、笑顔で頷き返す。
サイ「やっぱり、人前に出るのは得意じゃないけど」
サイさんは困ったように微笑みながら、私を見つめる。
サイ「こうして、君が隣にいてくれるなら……。 自分らしく、プリンスアワードも楽しめそうだよ」
蒼玉の瞳が陽の光を映し、その輝きを増していく…ー。
その後、華やかなパレードは再開され、私達は、沿道の観衆に笑顔で手を振り続けた…ー。