最後の試合が始まり、アインツさんが剣を構えた。
○○「アインツさん! 頑張ってください!」
アインツ「○○!」
私の声が届いたのか……
アインツ「ここで見せなくてどうするんだよ! 見せてみろオレの実力を!」
そう大きな声で叫んで、アインツさんは腕をふりあげた。
…
……
競技会が終わり、城に戻るころには空に星が輝いていた。
(アインツさん、大丈夫かな……)
城に戻ると、アインツさんは言葉もなく部屋へと戻ってしまった。
彼の部屋の前まで来て、そっとノックをしてみる。
○○「アインツさん……」
アインツ「来るな。オマエに合わせる顔がない」
○○「そんな事ないです。アインツさん頑張ったじゃないですか」
アインツ「……」
アインツさんの部屋のドアが静かに開いて、彼が顔を出す。
○○「入ってもいいですか?」
アインツ「ああ……」
部屋へ入ると、アインツさんはがっくりと肩を落としてソファに腰かけた。
アインツ「……オレは最後までオマエにカッコイイ姿を見せられなかった。 あんなに応援してくれたのに」
○○「アインツさん……」
うなだれたアインツさんのそばに寄って、顔を覗きこんだ。
○○「かっこよかったですよ。一生懸命に頑張るアインツさん。 私は、頑張る人が好きです……」
アインツ「……好き? オレだってオマエが好きだ! でもオマエの好きとは違う! オマエの好きは友達としてだろ? オレの好きはもっと大きくて……もっと深くて……。 つまりラブっていう意味だ!」
ソファから勢いよく立ち上がり、アインツさんが私を見つめた。
○○「ラ、ラブ……?」
アインツ「オレはオマエのことが、本気で好きなんだ」
真剣な眼差しが、私を射抜いた。
アインツ「だから、カッコイイとこを見せたかったのに、なんか上手く行かなくて……!」
(アインツさんが、私のことを……?)
(じゃ、じゃあ……)
ーーーーー
○○「もうすぐですね」
アインツ「そうだな、もうすぐだ!」
○○「練習の成果が発揮できるといいですね!」
アインツ「そうだな! 発揮できるといいな!」
○○「……優勝目指して頑張ってくださいね」
アインツ「そうだな! 頑張ってくださる!」
ーーーーー
○○「も、もしかして緊張してたのは、私のせいで……?」
アインツ「ち、違う! 断じて違う!」
アインツさんが慌てて、私の肩を掴んだ。
彼の耳飾りが、小さく揺れる。
アインツ「オマエのせいじゃない。オレが弱かったんだ……」
(アインツさん……)
真っ赤になって恥ずかしそうに目を伏せる彼に、胸に温かい気持ちがこみ上げる。
(……私も、アインツさんのことしか、見てなかった)
(勝って欲しくて、笑顔が見たいって思って……)
(私……)
自分の中の気持ちに、あてがう言葉を見つける。
○○「……私もです」
アインツ「え?」
○○「私も……アインツさんと同じ意味で好きなんです。 その……ラ、ラブ……?」
アインツ「○○……。 ほ、ほ、本当か!?」
○○「はい……」
アインツ「オレを……こんなオレをか!?」
○○「はい」
きっぱりと答えると、アインツさんが嬉しそうな笑みを浮かべて……
○○「……!!」
彼の腕が、私を力強く抱き寄せた。
○○「ア、アインツさん……」
アインツさんの瞳に、赤い顔をした私が映し出される。
だんだんと、その瞳が近づいてきて……
【スチル】
○○「…………」
アインツ「…………」
(あ……あれ……?)
静かに目を開けると、唇が触れる直前の距離で、アインツさんは険しい顔をしている。
アインツ「だ……ダメだ! オレはどこまでかっこ悪いんだ!!」
○○「ア……アインツさん?」
アインツ「本当はかっこよく勝って、オマエに告白するつもりだったのに! 今だってそうだ! 愚痴を言った挙句にこんな形で告白!? 自分の馬鹿さ加減に飽きれる!」
首を横に振り、アインツさんが私から手を離した。
○○「アインツさん……っ」
思わずその手を掴み直してしまう。
○○「そんなことないです……。 どんなアインツさんでも、かっこいいですよ」
アインツ「○○……」
アインツさんに再び腰を引き寄せられる。
アインツ「……どんなオレでもカッコイイのか?」
○○「え……」
熱を帯びた瞳が、私を見下ろしている。
○○「アインツさん……」
アインツ「オレは今、きっと世界で一番カッコ悪い男だ! 競技には負け、勢いで告白し、好きな女に自分のことを慰めさせてしまっている! そんなオレでも、本当にいいのか!?」
○○「……はい」
にっこりと笑って返事をすると……
私の唇に、遠慮がちに彼の柔らかい唇が触れた。
アインツ「好きだ……○○!」
○○「アインツさ……んっ」
肩をぎゅっと掴まれて、今度は激しく口づけられる。
アインツさんの腕に触れながら……
どうしようもなく不器用で優しいこの人のそばで、これからも笑っていたいと思った…―。