パーティが終わり、案内してもらった部屋に入った後……
私は窓から星空を眺めながら、ミヤのことを考えていた。
ーーーーー
ミヤ『今、イリアは城にいないんだ』
ミヤ『帰ってきたら、紹介するからね』
ーーーーー
(ミヤのあの顔が、忘れられない)
ミヤの寂しそうな表情を思い出すと、胸が重くなる。
眠れそうになくて、気分を落ち着かせるため中庭へと向かった。
月明かりに照らされた中庭に、誰かがたたずんでいる。
(あれは……)
(ミヤ?)
静かに夜空を見上げていたのは、ミヤだった。
(なぜだろう、声をかけられない)
彼に気づかれないように、そっとそこから立ち去ろうとした。
けれどその時……
ミヤ「戻っちゃうの?」
ミヤの声が、私の足を止めた。
ミヤ「どうしたの? ○○ちゃん」
○○「なんだか、眠れなくて」
(ミヤのことを考えていて……とはさすがに言えないけど)
ミヤ「なら、○○ちゃんも、星空観賞しようよ!」
○○「星空?」
ミヤ「うん、この場所からが一番綺麗に見渡せるんだよ」
ミヤが両手を頭の後ろに組んで、夜空を仰ぎ見る。
ミヤ「そうだ」
そうつぶやいて、彼は柔らかい芝生の上に寝転がった。
ミヤ「この方がよく見えるよ」
隣の芝生をぽんぽんと軽くたたいて、くすりと微笑んだ。
ミヤ「おいで?」
その言葉に甘えて、そっとミヤの隣に横になる。
○○「月が綺麗……」
輝く星々の中で、大きく丸い月が、まるですべてを洗い流すように柔らかな光を降り注いでいた。
ミヤ「そうだね、本当に綺麗だ。 ……見入っちゃうね」
○○「ミヤは月が好きなの?」
ミヤ「……。 好きというより、憧れてるのかも」
○○「憧れ?」
ミヤ「月はさ、無理して輝かなくても、こうして夜には主役になれるから。 いいよなぁ……。 それに比べてオレは……」
ミヤのその声を聞いていると、胸が切なくなって……
○○「ミヤ……? どうしたの?」
月に照らされた横顔に、そっと彼に声をかける。
ミヤが、はっと私の方を見た。
ミヤ「ごめん。 今の、忘れて」
○○「え……?」
ミヤ「だーかーらー! 今のは無し! 辛気臭いオレは、オレじゃない!」
ミヤが、おどけた様子で自分の髪をくしゃりと掴んだ。
けれど、なぜだか切ない気持ちが込み上げてきてしまって……
○○「元気じゃなくても、いいんじゃないかな?」
ミヤ「え……?」
(ミヤが何を抱えているかはわからないけど)
○○「私も、ミヤの笑顔が好きだよ。 でも、いつも元気だったら、疲れちゃうよ」
(だから無理、しないで……)
もっと伝えたいのに、うまく言葉が出てこない。
ミヤ「○○ちゃん……」
ミヤが、少し驚いたような顔で私を見つめる。
ミヤ「ありがとう……ごめんね、そんな顔しないで、ね?」
ミヤは私の方に体を向け、大きな手で、優しく私の頬を包み込んだ。
ミヤ「優しい子だね、キミは……」
その手に、自分んの手をそっと重ねる。
(温かい……)
そのまましばらく、私達はお互いを見つめ合っていた…-。