街の中でミヤと出会った後…-。
彼は大きく伸びをすると、私に手を差し出した。
ミヤ「さて、このまま城に戻るのもなんかつまんないし……。 せっかくだから、デートしちゃおっか! 」
(デ、デート?)
ミヤが半ば強引に私の手を取る。
ミヤ「さ、行こう!」
ミヤの笑顔に、自然に胸が躍り出してしまう。
○○「……楽しみ!」
微笑んで、ミヤの力強い手を握り返す。
(不思議だね。ミヤといると、なんだか自然に笑顔になっちゃう)
ミヤ「そうだ、お腹すいた? この近くに人気のお店があるんだ。 噂だと、食べるとなんと口から本物の火を噴き出す!」
○○「え!?」
ミヤ「っていうのは、冗談だろうけど」
思わず口を押えた私に、ミヤが悪戯っぽく笑う。
ミヤ「でも、楽しそうでしょ?」
○○「うん!」
その時……
街の男「おっ! ミヤじゃないか。どうしたんだよ、可愛い子連れて」
ミヤ「へへっ! うらやましいだろ! それより、お前また太った?」
街の男「うるせぇな、ほっとけ」
街の女「あっミヤ王子! こっち寄ってってよー♪」
ミヤ「やあシンディ、ありがとー! でもごめん、また今度ね!」
街の人がミヤを見つけては次々に声をかけて笑いかける。
(ミヤ、人気者なんだな)
そんな笑い声が溢れる街の中で、ふと、泣き声が聞こえてきた。
その声をたどると、街の外れにある大きな木の下で、女の子が泣いていた。
ミヤ「どうしたの?」
ミヤが歩み寄り、女の子と同じ目線になるようにしゃがみ込む。
優しいミヤの声に、女の子が涙にぬれた顔を上げた。
女の子「ヒック…ッ……ネコちゃん……」
ミヤ「猫?」
女の子が指さす方を見上げると……
細い枝の上で、子猫が心細そうな鳴き声を上げていた。
ミヤ「ああ、降りられなくなっちゃったんだね。 君のお友達?」
女の子「うん……」
ミヤ「じゃあ、早く助けてあげなくっちゃね」
目に涙をためている女の子に、ミヤは笑いかけ、女の子の頭を優しく撫でた。
ミヤ「オレに任せといて!」
そう言ったかと思うと、ミヤは木の幹を身軽に登っていって……
すぐに枝までたどり着いて、子猫に手を伸ばした。
ミヤ「さぁ、もう大丈夫だよー」
けれど……
ミヤ「痛ててて……」
興奮した猫が、ミヤの腕に爪を立てた。
ミヤ「こら、暴れないで~……あっ!」
腕から逃げようとする猫を追って、ミヤがバランスを崩してしまう。
○○「ミ、ミヤ!!」
ミヤ「だーいじょうぶだよっと……!」
けれどミヤは素早く体勢を変え、猫を抱いてひらりと地面へ着地した。
ミヤ「ふ~……けど、ちょっとびっくりした」
(よ、よかった)
ミヤ「はい! 君のお友達」
女の子「ありがとう!」
女の子はミヤから子猫を受け取ると、大事そうに抱きしめる。
ミヤ「よかったね」
女の子「お兄ちゃん、ありがとう!」
満面の笑顔を浮かべた女の子は、ミヤにお礼を言って走っていった。
ふとミヤの腕を見ると、猫に引っかかれた傷ができていた。
○○「ミヤ、腕に傷が! 手当しないと……」
赤くにじんだ線状の傷が、痛々しい。
ミヤ「ああ、こんなの大丈夫だよ」
○○「駄目だよ、ちゃんと手当しなきゃ」
持っていたハンカチを、ミヤの傷にそっと当てると……
ミヤ「○○ちゃんは、優しいなあ」
太陽のような笑顔を見せて、ミヤが私の頭にそっと手を伸ばして、小さな女の子にするように、そっと私の頭を撫でた。
ミヤ「心配してくれて、ありがと」
(大きくて温かい手……)
なんだか恥ずかしくなって、そっと彼を見上げると……
優しく笑う彼の瞳に、頬を染めた私が映し出されていた…-。