魔法の国・ソルシアナ、彩の月…-。
澄み渡る青空を、箒に乗った街人が飛び交っている。
(本で読んだ世界が目の前で広がってるみたい)
通りを歩きながら、心躍らせた。
街道で大道芸人さんが手を振り上げると、小さな花火が青空を彩る。
(綺麗……!)
美しい魔法に見入ってると……
不意に、私の視線が遮られた。
(え……?)
街の男「あれ~? 君一人~?」
ニヤニヤしながら笑みを浮かべた背の高い男性が、私の顔を覗き込んでいた。
街の男「よかったら一緒に遊ばない?」
○○「わ、私はこれからお城へ行かないといけないんです」
街の男「お城~? そんなつまんないとこ行かずにさ、もっと楽しいことしようよ」
(ど、どうしよう)
男性の手が、私の肩に回されかけた時……
??「ごめんねー、彼女はオレの先約だから」
明るい声と共に、後ろから伸びた力強い腕が私と男性を引き離した。
ミヤ「やあ、○○ちゃん。待ち遠しくて迎えに来ちゃった」
○○「ミヤ王子!」
私をこの国へ招待してくれたミヤ王子が、満面の笑みを浮かべていた。
街の男「なんだよ、ミヤの連れか」
ミヤ「そうそう! 彼女はオレの恩人だからさ」
街の男「わかったよ。その代わり、今度何かおごれよ」
ミヤ「はいはーい♪」
男は困ったように笑って、そのまま去っていった。
呆気に取られた私に、ミヤ王子が明るく話しかける。
ミヤ「驚かせちゃってごめんね! あいつさ、女の子大好きで。根はいい奴だから、許してあげて?」
○○「はい……わざわざ迎えに来てくれてありがとうございます」
そう言うと、ミヤ王子は困ったように笑った。
ミヤ「あははっ! 堅苦しいのは無しだよ!! ミヤって呼んでよ、○○ちゃん?」
○○「じゃあ、ミヤ……?」
ミヤ「そうそう、そっちの方が、オレは嬉しいな!」
太陽のようにまぶしく、ミヤが笑う。
けれど私はまだこの時、この笑顔の裏にある陰りを知らなかった…-。