第4話 魅惑のダイアモンド

暗く冷たい雨が、中庭に振り続ける…-。

ミリオン「……」

〇〇「ミリオンくん……」

ミリオンくんの冷たい瞳に射抜かれ、続く言葉を失ってしまう。

ミリオン「……ああ、〇〇」

ミリオンくんはふっと目を細めると、いつものように明るく笑った。

〇〇「あの……」

ミリオン「帰りが遅くなったから、迎えに来てくれたんだね」

私の言葉を遮るように、ミリオンくんが言葉を重ねる。

ミリオン「ここは寒いから、もう行こうか」

そう言って、ミリオンくんが足元の子猫に背を向けた。

〇〇「でも……。 子猫はいいんですか?」

ミリオンくんの背中に、そう尋ねると…-。

ミリオン「……早く。風邪を引いてしまう」

すげなく答えると、ミリオンくんは私を置いて足早に歩き出した。

〇〇「あっ……」

子猫「にゃぁー……」

か弱い鳴き声を残し、子猫は茂みの中に逃げてしまった。

(あの子猫、大丈夫かな……)

後ろ髪引かれながらも、私はミリオンくんの背中を追いかけた…-。

……それから、数日後…-。

ミリオン「〇〇、今日はどの辺りを回ろうか?」

〇〇「あ、そうですね……」

ミリオン「よかったら歌劇場に行かない? ぜひ君に観せたいオペラがあるんだ」

あの雨の日のことなど、まるで何もなかったかのように、ミリオンくんはいつも通り、優しい笑顔を見せてくれる。

(いつもと少し様子が違うように見えたけど……)

(あの日のことは、私の気のせいだったのかな)

ミリオン「そうだ、〇〇にこれを」

話の途中で、ミリオンくんが取り出したのは……

〇〇「ネックレス……?」

ベロアボックスを開いた瞬間、大粒のダイアモンドがまぶしく煌めいた。

豪華な宝石を前にして、思わず目を見張る。

ミリオン「近々、諸外国を招いた晩餐会があるんだ。 〇〇のために、ドレスを用意したから……」

ネックレスを手にしたミリオンくんが、私の背後に回る。

(え……?)

私の髪をそっと片方の肩に流すと、少し冷たい指先が首筋に触れ、ずしりと重いダイアモンドのネックレスが私の首にかけられた。

ミリオン「うん、よく似合ってる」

二人で鏡の前に立つと、私は……

〇〇「でも、こんな高価なものをいただくわけには……」

鏡越しにミリオンくんを見つめ、私は言葉を詰まらせた。

ミリオン「どうして? 僕の気持ち、受け取ってくれないの?」

ミリオンくんの瞳に、寂しげな色が浮かぶ。

〇〇「気持ちなら、もう充分受け取っています。この国に来てから、とてもよくしてもらって……」

ミリオン「でも、そんなんじゃ全然足りないでしょ?」

(え……?)

彼は笑顔のままなのに、その声はわずかな苛立ちを含んでいるように聞こえた。

ミリオン「君のためにできることは、なんだってしたいんだ」

(ミリオンくん……)

ミリオンくんの真摯な申し出に、どうしても強く断ることができなかった。

〇〇「それじゃ、晩餐会の日だけ、お借りしますね……?」

ミリオン「そんなこと言わずに、受け取って? よく似合ってるよ、〇〇――」

有無を言わさぬ雰囲気に戸惑いながら、私は曖昧に頷いた…-。

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