第4話 温かな手

闘技場から戻った私達は、闘技会の前夜祭が開催される会場へと足を運んだ。

パーティーホールには、華やかな衣装をまとった人々が歓談している。

○○「賑やかですね」

ユリウス「各国から貴族や王族が招待されてるからな。ほら、行くぞ」

○○「え、どこへ?」

ユリウス「挨拶に決まってんだろ」

ユリウスさんは私を振り返り、片手を差し出した。

自然なそのエスコートに速まる鼓動を抑えながら、私はそっと手を重ねる。

ユリウス「そっか、初めてのヤツも多いよな。そう緊張すんなって」

○○「……ありがとうございます」

(でも、そういうわけじゃなくて……)

久しぶりに触れるユリウスさんの手はとても温かくて……

私に胸は、密かに高鳴っているのだった…―。

……

ひと通り挨拶が終わって…―。

ユリウス「これでいいか?」

ユリウスさんが、脚の細いグラスを私に差し出してくれる。

グラスの中では、透明の泡が爽やかに弾けていた。

○○「ありがとうございます」

ユリウス「大勢と話したからな。喉が渇いただろ?」

促されるままひと口飲むと、緊張が少しずつほぐれていく。

○○「闘技会、皆さんとても楽しみにしてるんですね。 ユリウスさんが出場することも心待ちにしてたみたいですし」

ユリウス「オレも、トールと手合わせできるのは楽しみだ。 長い間、国に脅威をもたらしていたモンスターを退治したヤツだからな」

○○「ユリウスさんとトールくん…ー。すごい試合になりそうですね」

ユリウス「ああ。この日のためにしっかり準備してきたからな。 闘技会自体はすごく、楽しみだけど……」

言い淀んだユリウスさんが、私から視線を外す。

(ユリウスさん、あの時と同じ目をしてる……)

ーーーーー

魔術師「我が国に限らず、隣国アヴァロンやアカグラ……他にもこの武器を必要とする国もあるでしょうし」

ユリウス「他国にも……?」

鍛冶職人「ええ、他国に広めることも、今回の闘技会の目的の一つですから」

ユリウス「そう、か……」

ーーーーー

ユリウスさんが見せた、暗い表情が頭をよぎった。

○○「何か気になることがあるんですか……?」

グラスに視線を泳がせていたユリウスさんが、私を見る。

その口元は何かを言い淀んでいて…―。

ユリウス「悪い、不安にさせちまったな」

どこか無理したような笑みを浮かべ、ユリウスさんが私の頭に手のひらを乗せた。

大きな手が私の頭を優しく撫でる。

○○「話して気が楽になるようなことなら……話してくださいね?」

ユリウスさんはしばらく私を見つめた後、ふっと笑って眉尻を下げた。

ユリウス「……ったく、おせっかいだな。少し外、出るか」

苦笑する彼に手を引かれ、私はバルコニーに向かった…―。

<<第3話||第5話>>