街の子ども達に混ざって、私達が瓦礫を組み立ててから数時間後…-。
街の子ども1「お姉ちゃん! もうちょっと左だよ!」
〇〇「左? えっと……」
大きな瓦礫を持って、子ども達の指示に従い積み重ねる。
(これって……)
どうやら子ども達は、自分達の基地を作っているらしい。
(そういえば、秘密基地って昔あこがれたな……)
街の子ども2「そっちのお兄ちゃんは右!」
メディ「おお! その判断は素晴らしいね! 右にこれを置くと見事な調和が出来上がるよ!」
メディさんも、一緒になって子ども達の手伝いをしてくれている。
(メディさんとこうやっているのはなんだか不思議な感じ……)
(それに、いつも楽しそう)
私のわがままに付き合ってくれているだけかもしれないけれど、メディさんはずっと笑顔のままだった。
メディ「素晴らしいね! この基地は芸術的美しさがあるよ!」
〇〇「早く完成して、皆の明るい笑顔が集まる場所になれればいいですね」
メディ「そうだね」
けれど、その思いを崩すように、地面が大きく揺れた。
メディ「……!」
〇〇「……!」
街の子ども1「基地が!」
今まで積み上げた瓦礫が、一気に崩れ落ちる。
(そんな……)
街の子ども2「もうすぐ完成だったのに……」
子ども達の笑顔が、みるみるうちに消えていく。
街の子ども3「また、壊れちゃった……」
街の子ども4「作っても作っても崩れちゃう……」
〇〇「皆……」
(どうしたらいいんだろう……)
すると……
メディ「なら、こういうのはどうかな?」
街の子ども「え……?」
メディさんが、崩れた瓦礫に筆を走らせる。
〇〇「メディさん?」
メディさんの手で、瓦礫がどんどんカラフルな色に染め上げられていく。
街の子ども1「なんだこれ!?」
街の子ども2「おっかしいの!」
子ども達がメディさんの絵を見て笑い出す。
街の子ども3「お兄ちゃん、この絵すっごく変だよ!」
メディ「芸術とは時に理解を得られないものだね。 けれど、この方が華やかだろう?」
街の子ども4「うん!」
メディ「さあ、キミ達も街を芸術で染め上げてしまおう!」
街の子ども達「はーい!」
(あんなに落ち込んでいた子ども達が笑顔になってる……)
〇〇「驚きました……こんな風になるなんて」
メディ「そうだろう? でもボクには、彼らの手でこの街が芸術的で素晴らしくなることはわかっていたよ! ハニー、キミは頑張り屋だ。ただ笑顔が足りないよ。なんでも楽しまないと。 そして、芸術というちょっとしたスパイスを足すのさ!」
〇〇「メディさん……」
その言葉が驚くほど私の心を明るくしてくれる。
(いつも……メディさんには元気づけられてばかりだ)
街の子ども「お姉ちゃん達も絵を描こうよー!」
〇〇「うん!」
手のひらに絵の具をつけて、子ども達と一緒に瓦礫に手あとをつける。
絵具だらけになるのもかまわず、夢中で街に色をつけていく。
街の子ども「もっとたくさん絵を描こうよ!」
その時、また大きく地面が揺れた。
〇〇「さっきより大きい……?」
次々に地面にひびが入っていく。
〇〇「子ども達を守らないと!」
メディ「キミ達! そこから動いちゃいけないよ!」
私が子ども達を抱きかかえると、その上に覆いかぶさるようにメディさんが両手を広げた。
目の前の地面にひびが入り、裂け目が現れる。
街の子ども「またくずれちゃった……ぼくこわいよ……」
メディさんは子ども達に笑いかけると、ゆっくりと落ち着いた声で話した。
メディ「ほら見てごらん。少し崩れてしまったけど、カラフルで綺麗だろう? キミ達は偉大な芸術家だね」
(メディさん……)
街の子ども1「ほんとだ……」
メディ「偉大なる芸術家達よ。いいかい、慌てずに避難するんだ」
街の子ども「うん!」
メディさんに従い、子ども達は安全な場所へと避難していく。
(メディさんって不思議……)
メディ「さあ、ハニー。ボク達も……。 !」
私達のすぐ足元で、地面に亀裂が走る。
その時、私達のもとから何かが落ちていった。
〇〇「あれってもしかして……」
(メディさんの筆?)
〇〇「だめ!」
私は慌てて筆へと手を伸ばした。
メディ「〇〇!」
筆は弧を描き、裂け目へと吸い込まれていってしまいそうで…―。