第1話 代表としての気負い

声の国・ヴォックス 陽の月…-。

厳かなホールに、美しい重唱が響き渡っている。

ヴォックスで今度上演される歌劇『仮面と薔薇』鑑賞に招待された私は、シュティマさんのご厚意で、練習の様子を見学させてもらっていた。

(シュティマさん……大丈夫かな)

日を追うごとに、歌劇の完成度は増しているように感じるけれど……

シュティマ「……」

主役の『仮面の男』を演じるシュティマさんだけが、練習初日からずっと険しい雰囲気をにじませていた。

〇〇「シュティマさん、お疲れ様です」

客席に腰を下ろしている彼の隣に行くと、力なく手を振って応えてくれる。

シュティマ「〇〇、今日も来てくれたんだな。ありがとう」

〇〇「いえ……調子はいかがですか?」

シュティマ「うーん……もちろん、最初よりはよくなってきているけど」

シュテルさんは、首を傾げてから苦しそうに喉を押さえた。

シュティマ「情けない話だ……。 国の代表としての出演ってことに、妙に緊張してしまってるなんて。 何がなんでも、歌劇を成功させないといけないのに……」

シュティマさんがぼんやりと舞台を見つめる。

その横顔には、迷いがありありと浮かんでいた。

(シュティマさん、思い詰めてるみたい)

(何か……私にできることはないかな)

私は考えをまとめるように、彼と並んで舞台を眺めたのだった…-。

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