第4話 満たされる感覚

晴れた青空に、ゆっくりと雲が流れていくその下で……

グラッド「……」

グラッドくんは、私が渡したクッキーをあっという間に食べ終えてしまった。

(さっき渡したばっかりなのに、もうなくなっちゃった)

夢中になって食べてくれたことを嬉しく思いつつも、彼の食欲に改めて驚かされる。

グラッド「まだあるか?」

〇〇「うん。あるよ」

当然、今すぐに食べるものと思っていたけれど……

グラッド「なら、劇の途中に食べる。なんか……このクッキー、美味い気がする」

〇〇「え?」

(今……おいしいって言った?)

グラッドくんの言葉に、私は思わず耳を疑う。

グラッド「あんたの作ってくれたクッキーだけは、他と違う」

そう言うと、グラッドくんはもう一枚だけクッキーを摘まんで、口に放り込んだ。

〇〇「……嬉しい」

頬を緩ませながら彼にそう言うと、グラッドくんは不思議そうに目を瞬かせた。

グラッド「そんなに喜ぶことか?」

残りのクッキーを渡すと、グラッドくんは大切そうに手で包み込んだ。

(いっぱい作ってきてよかった)

気づけば、歌劇が始まる時間が迫っていて…-。

〇〇「そろそろ、劇場に行こうか」

グラッド「ああ」

私とグラッドくんは微笑み合って、歌劇が行われる劇場へと向かった…-。

……

観劇を終えた後も、私は物語の世界に心を奪われていた…-。

ヒロインと謎の仮面の男の切ない恋模様を思い出し、胸が締めつけられる。

(素敵なお話だったな……)

グラッド「……クッキー、なくなった」

〇〇「全部、食べちゃったんだ」

(けっこう量はあったと思うけど……やっぱりグラッドくんからすると、少しだったかな)

グラッドくんはきまり悪そうに前髪をくしゃりと掻き上げる。

グラッド「劇の途中で、すごくいっぱい料理が出てきただろ? あれ見てたら、余計に腹が減って」

〇〇「確かに……見た目の華やかで、おいしそうな料理だったね」

グラッド「おいしい……か」

(あ……)

ぽつりとつぶやいた声は、いつもより低くて…-。

グラッド「歌劇に出てきた男も、満たされた、悔いはないって言ってた。 俺は満たされたことがない。満たされるってのは、どんな感じだ?」

その表情から、彼が真剣に答えを求めていることがわかる。

(満たされる感覚って……)

彼を見つめ返しながらも、私はどう答えたらいいのか考えあぐねていた…-。

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