第2話 空腹を満たす食事

テーブルにのせられたたくさんの料理から、おいしそうな匂いが漂ってくる。

グラッドくんはメニューを手に取ると、首を小さく傾げた。

グラッド「あんたは何がいいんだ? 俺にはあんたが何を食べたいのかわかんねえ。だから、あんたが決めてくれ」

罪過の国で『暴食』の罪を司る官吏の一族であるグラッドくんにとって、食事はただの空腹を満たすためだけのものだった。

(食べられるものはなんでも食べるって言っていたし……味はあまり気にならないんだよね)

〇〇「うん。ありがとう」

メニューを私に手渡すと、グラッドくんはすぐにまた目の前の料理を食べ始めた。

(グラッドくん、相変わらずだな)

変わらないグラッドくんの姿を見て、また笑みがこぼれる。

気持ちよく料理を平らげていく彼に触発されるように、私も料理を注文するのだった…-。

……

しばらくすると、私が注文した料理が並べられた。

(どれもおいしそう……でも、ちょっと頼みすぎちゃったかな)

すると、黙々と食べていたグラッドくんが顔を上げる。

グラッド「そんな量でいいのか?」

(えっ……?)

〇〇「これでも、多いかなって思ったんだけど……」

グラッド「これで?」

グラッドくんが、目を大きく開いて驚いた表情を浮かべる。

(グラッドくんにしたら、たいしたことない量なんだろうな)

目の前に置かれた料理の量を見比べて、私は改めてグラッドくんの食欲に息を吐いた。

〇〇「いただきます」

パンを口に含むと、香ばしい香りが広がる。

(……おいしい)

幸せな気持ちでいっぱいになっていると……

ふと、グラッドくんが食べる手を止めて私をまじまじと見つめていることに気がついた。

(もしかして、食べたいのかな?)

〇〇「グラッドくん、これ食べる?」

グラッド「え?」

尋ねると、グラッドくんが不意を突かれたような声を上げる。

グラッド「……そうじゃない。 あんたが……食べてる時……幸せそうだから」

〇〇「……!」

グラッド「……俺はそんなふうに満たされたことがない」

(そういえば、さっき……)

――――――

グラッド『別に……腹ならいつでもすいてる。俺は食べても食べても……』

―――――

〇〇「グラッドくん……」

グラッド「悪い。気にしないでくれ」

決まりが悪そうに視線を逸らすと、グラッドくんは再び料理に手を伸ばした。

(満たされる、か……)

どこか寂しそうにつぶやかれた、グラッドくんの言葉が気になったけれど……

グラッド「あんたも、食べろよ」

〇〇「う、うん」

それ以上はそのことに触れることなく、私達は食事を進めたのだった…-。

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