第1話 空腹な彼の気遣い

声の国・ヴォックス 陽の月…-。

有名な歌劇がヴォックスで上演されることになり、招待を受けた私は、同じこの地に訪れていたグラッドくんと待ち合わせをしていた。

歌劇の内容は、街で評判の美しいヒロインが、仮面をつけた謎の男と恋に落ちる物語だけど……

(グラッドくんは、その後の晩餐会の料理がお目当てみたい……)

たくさんの料理を食べているグラッドくんの姿を想像すると、微笑ましくて顔がほころんだ…-。

待ち合わせをしてるレストランに着き、私は店内を見渡す。

(グラッドくん、いるかな?)

すると、テーブルの上にたくさんの料理が並べられている席が目に留まった。

〇〇「! グラッドくん」

グラッド「……」

グラッドくんは食事していた手を止めると、ちらりと私を見た。

〇〇「待たせちゃったかな?」

グラッド「腹が減ったから先に食べてた……あんたも食え」

グラッドくんの意識はすぐに目の前の食べ物へと戻り、再びそれらを黙々と口に運び始める。

〇〇「ごめんね、お腹すいちゃったよね」

グラッド「別に……腹ならいつもすいてる。俺は食べても食べても……」

何かを言いかけて、グラッドくんは言葉を止めた。

(どうしたのかな?)

グラッド「……気にせずに食え。あんたも腹減ってるんじゃないか?」

〇〇「うん、ありがとう」

黒い尻尾を微かに揺らし、彼が私を見つめる。

(私のこと、気にかけてくれてるんだ)

彼の気遣いに、胸に温かいものが広がっていった…-。

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