第2話 二人きりの時間を

人々が優雅に笑う声が、午後の日差しに溶けていく・・・・

帽子屋さんの主催するお茶会は、それは素晴らしいものだった。

マッドハッター「この紅茶などもいかがでしょう?こちら紅茶の国より仕入れた一級品なのです」

○○「素敵な香りですね」

彼は私をじっと見つめて、微かに口角を上げる。

マッドハッター「ところでお嬢さん、お茶会での一番素敵な紅茶の楽しみ方を知っていますか?」

私は彼の唐突な問いに・・・・ー。

○○「会話と一緒に楽しむことでしょうか?」

マッドハッター「ほう・・・・模範的な解答だ。 まあ、実際は、この問いに唯一の答えなどないのですが・・・・」

○○「答えがない?」

芳醇な紅茶の香りが漂うカップを手にしたまま、私は瞳をまばたかせる。

マッドハッター「つまり、楽しみ方など人の数だけ存在すると」

彼は持っているステッキをトンと地面で鳴らし、微かに笑みを浮かべた。

○○「だったら、今の質問にはどのような意味が?」

すると彼はカップを優雅に傾け、不敵な視線を私に送った。

マッドハッター
・・・・さあ?」

不思議な光を放つその瞳に、心まで見透かされそうで・・・・ー。

マッドハッター「おや、どういたしましたか?」

○〇「! いえ・・・・こんな素敵なお茶会に自分は場違いなのではないかと」

心を読まれたような気がして、私は焦って探し当てた言葉を口にする。

マッドハッター「気負うことはありません。君は主賓。私を眠りから覚ましてくれた感謝の意を表したくて・・・・」

○○「・・・・」

にこりともせずに答える掴みどころのなさに、つい言葉を忘れてしまう。

すると帽子屋さんは、静かに瞳を閉じた。

マッドハッター「どうやら私達には、互いのことをよく知るために、二人きりの時間が必要なようだ」

すっと胸元から取り出されたのは、一枚のカードだった。

角には、シルクハットのマークが描かれている。

マッドハッター「今週の日曜、この場所でお待ちしております、どうか賢いご判断を」

○○「賢いって・・・・」

マッドハッター「デートとでも、暇つぶしとでも、どうぞ君のご自由に」

もう一度だけ私に視線を送ると、帽子屋さんは踵を返して私の前から立ち去って行った。

(変わった人・・・・)

彼のとらえどころのない笑みを思い出すと、

最高級の紅茶の味も、私にはすっかりわからなくなってしまっていた・・・・ー。

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