第4話 研究熱心

翌日、窓の外には晴れやかな青空が広がっていた。

(ルルスは今日ずっと、研究だって言ってたよね)

窓から中庭を見ると、ローブをまとった人達が、大きなフラスコの中で炎や水を生み出している。

(錬金術の国、か……)

(せっかくだし、街を見に行ってみようかな)

私は部屋を出て、ルルスを誘おうとラボに向かったのだけど……

ノックして部屋に入っても、彼は私に全く気づかない。

ルルス「……」

黒板に書いた長い数式を見ながら、ずっと何かを考えている。

〇〇「あの、ルルス……?」

ルルス「……! いたのか」

ようやく私の姿に気づいたルルスは、こちらを一瞥するとまた数式とにらめっこを続ける。

(研究が忙しいのかな? 邪魔しちゃ悪いし……)

ラボを後にしようと扉に手を伸ばした時だった。

ルルス「研究中のオレといてもつまらないだろう、悪いな」

〇〇「いえ、そんなことは……」

慌てて否定して彼の顔見ると、切れ長の瞳の下にわずかに隈が見えた。

〇〇「もしかして寝てないんですか?」

ルルス「……そういえばそうだな、忘れてた」

ルルス「忘れてたって……」

驚きながらも、私は続けて問いかけてみる。

〇〇「ご飯は……さすがに食べてますよね?」

ルルス「……」

〇〇「ルルス?」

けれど、ルルスの言葉は返ってこない。

その視線はまた、黒板に一心に向けられた。

それでもじっと、ルルスの背を見つめていると……

ルルス「……?」

しばらくして、ルルスが私に向き直った。

ルルス「どうしたんだ? そんなに睨んで」

〇〇「あ…-」

(……見つめすぎたかな)

私の傍までやって来て、くすりとルルスが笑う。

その小さな笑顔が、私の胸をくすぐった。

(やっぱり……笑うと、すごくあどけないな)

けれど…-。

ルルス「お前は街でも見に行ったらどうだ?」

〇〇「アルケミアの街って、どんなところなんですか?」

ルルス「別の国から来たのなら面白いと思う。錬金術で栄えた街なんてここくらいなものだ」

ルルスはチョークを黒板の近くに置くと、部屋の扉の前に立った。

ルルス「人をつけてやるから、とりあえず一度街を見てみるといい。オレは研究を続ける」

〇〇「……はい」

(拒否されてるわけじゃないってわかるけど、少し寂しいかも……)

ルルス「……〇〇?」

ルルスが私を見て、不思議そうに首を傾げる。

〇〇「あ、いえ……なんでもないんです!」

ルルス「……そう、か?」

〇〇「失礼します……!」

瞳を瞬かせるルルスから逃げるように、私はラボから立ち去った…-。

アルケミアの街は、多種多様な種族が行き交う風変わりな街だった。

〇〇「この国って、いろんな方がいるんですね」

(それに皆、不思議な力を使っているみたい。あれは……錬金術?)

人の力では到底持ち上げられなさそうな荷物を簡単に持ち上げたり、生物なのか機械なのか判断がつかない謎の生き物を連れ歩く人々もいる。

従者「アルケミアは近くにある精霊の国とも友好状態を保っておりますから、精霊の種族もやってきます」

〇〇「じゃあ街の人が使っているあの不思議な道具や力は?」

従者「ルルス様が精霊の力を応用して、錬金術で生み出したものです」

従者さんが、道端で大荷物を軽々と運ぶ人達を見ながら話す。

〇〇「じゃあ、ルルス王子はこの国の人達から尊敬されてるんですね」

私のその問いに従者さんは言葉を詰まらせる。

従者「さぁ……私達のような下々の者には理解の及ばない方ですから」

(え……)

従者「ルルス様は天才です。 それゆえ……ルルス様を理解できる方は少ないと思います」

従者さんは少し哀しげに、ルルスが生み出したという道具を見やった…-。

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