第2話 笑えない会話

ルルスさんに連れられ、私はアルケミアの城へとやってきた。

(不思議なお城……)

回廊を行き交う人々は長いローブを羽織っている者が多く、手には分厚い書物や見たこともない鉱物を持っている。

ルルス「どうした?」

視線を忙しく動かしていた私を、ルルスさんがちらりと見やる。

すると彼の表情に合わせて、杖の中の生き物も不思議そうな顔をした。

(かわいい)

〇〇「ルルスさん、その子…ー」

ルルス「オレのことはルルスでいい。堅苦しいのは嫌いだ」

〇〇「……じゃあ、ルルス」

ルルス「うん、その方が気兼ねしなくていい」

(あ、また笑った)

ふとした瞬間に見せる柔らかな笑みに、なぜだかひどく惹きつけられる。

その時、ルルスの姿を見て、身なりのいい男の人が近づいてきた。

貴族風の男「ようやく戻ってきたのか。やっぱり天才ってもてはやされる奴は余裕だねぇ」

ルルス「そんなことはない」

貴族風の男「あんまり長く戻らないから、遂に自らを錬金術の素材にでもしたかって城じゃ話題になっていたぞ?」

男の人は意地の悪そうな目でルルスを見て口元を歪めるけれど…ー。

ルルス「それはない。オレを材料にしてしまったら研究が続けられない」

至極真面目に、ルルスは男の人にそう返す。

貴族風の男「全く……天才ルルス様は、我々の理解を越えていらっしゃる」

男の人は呆れた様子でため息を吐くとその場から立ち去ってしまった。

〇〇「……今のは?」

ルルス「国の抱える錬金術師の一人だ。この国は一般の民以外の王族や貴族は皆、錬金術師だからな」

(錬金術……)

言葉を耳にしたことはあるけれど、いざそう言われてもどんなものなのか想像がつかない。

(けど、さっきの人……ルルスに対して、ひどい言いように思えたけど)

ルルス「あいつ、そういえば前に研究成果の報告会で会ったような……まあいいか」

ぽつりとつぶやくルルスの隣で、改めて広い回廊を見渡してみる。

長い間、城を留守にしていた割には、ルルスの姿を見て違和感を持つ人はいないようだった。

〇〇「誰もルルスのことを心配してないんですか?」

ルルス「心配? ああ、普通の国だとそうなるのか。けどここには、そういうヤツはいないと思う。 さっきも言ったが、ここは錬金術の国だ。 錬金術師が研究に没頭してラボから出てこないなんてことは、この国では日常茶飯事だ。 多分、さっきのは軽い錬金術師ジョークってやつだな。気にすることはないよ」

〇〇「ジョーク……」

(やっかみみたいに聞こえたけど、ルルスは全く気にしてなさそう)

(それとも……気づいてない?)

なんでもなさそうな彼を不思議に思って、男の人の去って行った方を見る。

するとルルスは……

ルルス「あんなジョーク、面白くもなんともない……お前もそう思うよな?」

手にしていた杖を軽く振って、フラスコ状のガラスの中にいる不思議な生き物に話しかける。

(あ、そうだ。この子……)

嬉しそうにルルスを見つめる白い毛玉のような生き物のことを、再度問いかけようとした時だった。

ルルス「そうだ」

〇〇「?」

彼は突然何かに弾かれたように顔を上げ、その場から早足で歩き出した。

〇〇「ルルス!?」

ルルス「悪い。さっきお前の指輪の力を見て閃いたことがあったんだよ。 ラボに急ぎたい。すぐに試したいからお前も来てくれるか?」

〇〇「えっ……はい」

並んで歩くルルスの瞳は、きらきらと輝いている。

ルルス「指輪に精霊の力と同じような力が働いているとしたら、理論的にはそこから新たなエネルギーが……。 六大精霊の魔力の構成比率を変え、エネルギー転化を起こせばあるいは……」

ぶつぶつと独り言を言うルルスを、杖の中の生き物が嬉しそうに見つめていた…ー。

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