第4話 こぼれた言葉

弾かれたようにカランさんの前から飛び出して、必死にリドの背中を追いかけた。

〇〇「リド、待って……!」

リド「どうしたんだよ、兄貴とはもういいのか?」

〇〇「なんで、いつもいきなりいなくなろうとするの……?」

リド「なんでって……そりゃ……」

リドがばつが悪そうに言い淀む。

〇〇「私は……リドと一緒にいたいのに」

思わず口からこぼれてしまっていた。

リド「……オレと?」

リドは目を丸くして私を見つめていたが……

リド「そんなこと言われるの、なかなかないな」

目を細め、嬉しそうに微笑んでくれた。

リド「よし! あんたまだ元気か? 夜の街に遊びに行くか!」

〇〇「遊びに行くって……今から?」

リド「そう、今から! いいだろ?」

〇〇「うん! 嬉しい」

そうして、リドとお忍びで夜の街へ繰り出した。

露店街を歩いたり、雑貨屋さんを覗いたり……

(まるで元の世界でデートしているみたい……)

そんなことを考えながら、一人で頬を染めてしまう。

〇〇「おいしい……!」

リドに連れて来てもらったのは、路地裏にひっそりと居を構える、隠れ家のようなレストランだった。

リド「だろ? オレのお気に入りの店なんだ。 マスター! おかわり頼む。こいつ、よく食べそうだから」

〇〇「そ、そんなことないよっ……!」

リド「ハハッ……。 兄貴みたいに、ちゃんとしたとこの案内は苦手なんだけどな」

〇〇「私、この世界に来るまでは本当に普通の生活だったから。 こうやって過ごせるの、すごく楽しい。ありがとう、リド」

私の言葉に、リドが少し頬を赤くさせた。

リド「変な奴。普通が好きなんて……」

マスター「リド王子、お待たせ!」

気さくな店主さんが、料理を運んでくれる。

マスター「こんな可愛い子連れちゃって。ティーガ様達、どんな顔するかな」

(ティーガ?)

リド「あ……あいつらには、黙っててくれよ!」

いきなり、リドが慌てた様子を見せる。

〇〇「ティーガさんって?」

リド「あ、ああ……。 ティーガは、オレの国と親交の深い国の王子だよ。それとサイっていうのもいる。 小さい頃から仲良くてさ、たまに三人でここに遊びに来るんだ」

嬉しそうに話すリドから、三人がとても仲がいいことが伝わってくる。

リド「だいたいいつも、何かするとティーガが暴れ出して、サイがそれを収める。 オレは、振り回されっぱなし」

〇〇「ふふっ……」

リド「……兄貴もそうだけど、オレの周りにはデキるヤツが多くて。 人を惹きつける力っていうのかな、そういうのちょっとうらやましい」

(リド……?)

突然、リドの表情が少し曇り、思わず顔を覗き込んでしまう。

リド「な、なんでもねえよ」

私の視線に気付くと、彼はすぐにいつもの明るい調子に戻った……

楽しい時間があっという間に過ぎて、私達は城へ帰って来た。

リド「じゃ、連れ回して悪かったな。おやすみ」

リドのさっきの暗い表情が私の頭から離れなくて、歩き出そうとする彼に声をかけた。

〇〇「ねえ……また街に連れて行ってくれる? 今度は、お昼寝が気持ちいい場所。 私……リドといると、すごく楽しいよ」

リドは驚いた顔をしていたけれど……

リド「ああ、わかった!」

嬉しそうに目を細めて、私の髪に手を触れた。

リド「……ありがとな」

髪を優しく耳に掻け上げられて、くすぐったいような気持ちになる。

私の中でリドの存在が、気付かないうちに大きくなっていた…-。

リドは、先ほどの〇〇の言葉を思い出していた。

リド「オレといるのが楽しい、か……」

胸に温かいものが宿り、別れたばかりなのにまたすぐに彼女に会いたくなる気持ちを抑えていると……

カラン「リド」

神妙な面持ちで、カランがリドの部屋の前に立っていた。

リド「兄貴、どうしたんだ?」

カラン「私は、〇〇様に交際を申し込もうと思う」

リド「……! ……そっか。うん、バレバレだもんな、兄貴」

敬愛する兄に対して、今は笑顔を作ることで精いっぱいだった…-。

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