第3話 思い出すのは……

歓迎会の翌日…-。

ベッドから起きて身支度を整えていると、部屋のドアがノックされた。

リド「オレだ。起きてるか?」

持っていたブラシで慌てて髪をとかし終え、リドを部屋に招き入れる。

リド「昨日はお疲れ! 疲れてないか?」

〇〇「うん、大丈夫……カランさん、ダンスとっても上手だったし」

リド「……そうだろ?」

(リド……?)

ほんの一瞬、リドの顔が曇ったかと思ったけれど……

リド「せっかくこの国に来たんだ。今日はオレが街を案内してやるよ」

すぐに、明るいいつものリドの笑顔が向けられた。

〇〇「うん! 嬉しい」

その申し出に、心が弾んだ。

支度を終え、二人で部屋を出ると…-。

カラン「〇〇様……!」

部屋の前に立っていたカランさんにぶつかりそうになってしまった。

リド「おっと、ごめん兄貴! どうしたんだ? こいつに何か用か?」

カラン「いや、その……」

カランさんが少し口ごもる。

カラン「こ、これから街の視察があるから、〇〇様もご一緒にどうかと思い……」

リド「……」

リドは何かを思案していたが、やがて快活に口を開いた。

リド「……そっか! じゃあ、兄貴に任せようかな」

〇〇「えっ……? でも、私リドと……」

リド「じゃ兄貴、こいつ頼むな!」

言いかけると、リドが私を遮るように言葉を継いだ。

リド「ゆっくり見て回るといいよ! 兄貴の午後の公務、やれるとこはやっといてやるから!」

リドはそう言って、足早に部屋の前から去って行った…-。

そうして私は、カランさんの街の視察に同行させてもらった。

馬車から降りると、街を行き交うたくさんの人々の活気に包まれる。

けれど…-。

(リドは……何してるんだろう)

なぜだか、リドのことが気になってしまう。

カラン「〇〇様……?」

〇〇「あっ……すみません!」

(いけない、私……カランさんに、失礼だ……)

カラン「いえ……急にお誘いしてしまい、こちらこそ。 リドに礼を言わないとな……公務まで代わってもらって。 あいつはいつも、表には立たずに私のことを助けてくれるんです。 王位に興味を示さず……いつも私や周りのことを気遣ってばかりで」

〇〇「……なんとなく、わかる気がします」

(リド……)

それから私達は街を巡り、城へと戻った…-。

その夜…-。

カランさんに挨拶を終え、自室へと戻ろうと中庭を通りかかった時……

(リド……?)

リドが月明かりに照らされながら、中庭で空を仰いでいた。

リド「よう、どうした?」

その明るい声に、なぜだかとても安心する。

リド「どうだった? 兄貴、丁寧に案内してくれただろ」

〇〇「うん、でもちょっと緊張しちゃった。 リドといると、そんなことないんだけどな」

思わずそう言うと、リドは驚いた顔をした後、照れくさそうに頭を掻いた。

リド「で……どこを案内してもらったんだよ」

〇〇「図書館や、市庁舎や、オペラホールとか……」

リド「ハハッ! 兄貴らしいや。 でもまあ、オレだったら美味い店とか、昼寝するのに最適なとことか。 そんなのばっかだったろうな……兄貴に任せて正解だった!」

リドの悪戯っぽい笑顔に、胸が音を立てる。

〇〇「ふふっ……でも、私はそっちの方がいいかな。 今度は、リドと街へ行ってみたい」

リド「〇〇……」

不意に、私の顔にリドの手が伸ばされる。

(リド……?)

〇〇「……」

視線をそらすことができず、リドの瞳をじっと見つめる。

リド「……」

リドの綺麗な緑色の瞳が、揺れていた。

リドの手が私の頬に触れそうになり、胸が早鐘を打ち始めた、その時…-。

カラン「リド、〇〇様」

通りかかったカランさんが、こちらに近づいて来た。

リド「兄貴……」

リドは私に伸ばしていた手をそっと降ろした。

カラン「二人で、何を話していたのですか?」

リド「……」

リドはしばらく私とカランさんを交互に見つめていたが、やがて……

リド「……兄貴と街へ視察に行った時のこと、聞いてたんだよ」

ニッと笑って、そう答えた。

リド「じゃ、オレはもう部屋に戻るよ。 兄貴、後はよろしくな」

〇〇「えっ……」

私に背を向けると、城の中へと歩き出した。

カラン「〇〇様……」

〇〇「……すみません、私も、これで……!」

カランさんにお辞儀をして、私はリドを追いかけた…-。

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