第3話 知恵を与えられた王子

眠りから目覚め、久々に街に現れたリーヤさんは、人々に大人気だった。

どこからともなく大勢の人々が現れ、リーヤ様、リーヤ様と頼りにされていたのだ。

(リーヤさんを目覚めさせることができて、本当によかった)

私の手を強く引いて歩くリーヤさんの背中を見ながら、進んでいると…-。

城へ入り、中庭に差しかかったところで、前方から慌てた様子で駆けてくる人影が目に止まった。

??「リ、リーヤ様―っ……!」

あたふたと駆け寄ってきたのは、初老の男性だった。

それを見たリーヤさんが、私の手をぐっと引き前に押し出す。

リーヤ「執事。俺の客人だ」

執事「あ、ああ、リーヤ様……リーヤ様、よくぞご無事で……!」

執事さんは、リーヤさんの前に出された私には気にも留めず、彼を崇めるように、目を潤ませて喜んでいる。

リーヤ「おい、執事。聞いてんのか!?」

執事「聞いていますとも!リーヤ様、お帰りなさいませ。 皆々の者、リーヤ様のお帰りを首をながーくして……」

リーヤ「聞いてねえじゃねーかっ!いいか、こいつは俺の客人、だ!!」

執事「ほう……」

リーヤさんが、大きな声で一語一句丁寧に言う。

執事さんは、目を皿のようにして私をじっと見た。

(な、なんだか居心地が悪いような……)

リーヤ「いいか、執事。俺の客人ということは、つまりわかっているな? 丁重にもてなすんだぞ。俺を目覚めさせてくれた、トロイメアの姫だ」

執事「おお! それはそれは……あの、それで、どのようにして丁重に?」

リーヤ「はぁ……いいか、よく聞けよ?大事な客人だったら、右塔の最上階の部屋へ案内だろ!? それから、上等の茶菓子に、美味しい紅茶の用意だ。わかったな!?」

執事「かしこまりました、リーヤ様」

執事さんは、リーヤさんに事細かに指示を受けて満足そうに頷く。

その様子に、私は先ほどの街の人達の様子を思い出す。

(リーヤさん……なんだか大変そうだな……)

リーヤ「取り急ぎ、やらなきゃなんねーことがあるから、俺は部屋に戻るけど。 何か欲しいものとか不便なこととかあったら、なんでもこいつに言えよな」

そう言いながら、リーヤさんがくいと執事さんを指差す。

〇〇「あの、リーヤさんはこれから何をするんですか?」

リーヤ「ちょっと、どうしてもしなきゃなんねーことがあってさ。 落ち着いたら、お前の願いなんでも聞いてやるから待っててくれよ」

〇〇「……!」

(そ、そういうつもりじゃなかったんだけどな……)

優しくて頼りがいのある笑みで言われて、心が揺れる。

皆がリーヤさんを頼りたくなる気持ちが、少しだけわかるような気がした。

それからリーヤさんと別れ、私は執事さんに右塔の客室へと案内してもらった…-。

……

しばらく過ごすことになったお客様用の立派な部屋で、執事さんの淹れてくれたおいしい紅茶とお菓子を楽しんでいると…-。

執事「この度は、リーヤ様をお救いくださり本当にありがとうございました」

執事さんが、かしこまった様子で頭を下げた。

〇〇「いえ、目覚めさせることができてよかったです」

執事「本当に……リーヤ様は、我々にとって、とてもとても大切なお方なのです…-」

執事さんはそれから、リーヤさんがどれだけすごいかを語ってくれた。

昔、リーヤさんが知恵をもらうため、オズワルドさんを捜して旅をしていたこと。

(旅人は……なんだか似合っている気がする)

結果、オズワルドさんと巡り合い、無事知恵を与えてもらい……

その知恵より、西の森のカラス一族の嫌がらせから、なんとか守られていること。

執事「リーヤ様は天才なのです! あの方がいなくなってしまえば、この国はもうおしまいです!」

執事さんが必死にリーヤさんを褒め称えるのを聞きながら……

街の人達も皆口々に、リーヤさんが天才だと言っていたことを思い出す。

(けど……これだけたくさんの人から頼られてばかりだと、大変だろうな)

盛大なため息を吐くリーヤさんの姿を思い描いた、その時…-。

〇〇「……!?」

大きな爆発音のようなものと共に、部屋が激しく縦揺れを起こした。

(な、何……!?)

すると次には、部屋に勢いよく飛び込んでくる人影が……

リーヤ「大丈夫かっ!?」

執事「リ、リーヤ様、これは……!」

リーヤ「話は後だ!わりぃ、こっからすぐ出てくれ!」

〇〇「は、はい」

その瞬間……

〇〇「……っ!」

再度起きた揺れに、倒れる本棚から危機一髪……

リーヤさんは私の腕を引き、かばうように抱き寄せた。

リーヤ「来い……!」

ぐっと私を抱き寄せるリーヤさんの腕の力が強くなる。

見せる横顔は真剣そのもので、私は……

〇〇「……」

何も言えずに、黙ってリーヤさんに身を任せる。

リーヤ「大丈夫だからな!」

黙りこくってしまった私を案じてか、リーヤさんが力強く言ってくれた。

それから私達は、なんとか崩れ落ちる右塔から逃げ延びたのだった…-。

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