翌日の昼…-。
クリムパーティの催しとして、ジョシュアさんは赤にちなんだ紅茶を皆に披露することになっていた。
ジョシュア「国王様達からは、錬成方法探しを優先するため中止したいって言われたけど……。 オレはこの国の人達に、紅茶のよさを伝えたいからね。なんとか承諾してもらったんだ」
〇〇「はい。私も楽しみにしていますね」
誇らしげに胸を張る様子はとても頼もしくて、私も自然と背筋が伸びた…-。
…
……
芳醇な紅茶の香りが、パーティ会場に優雅に漂っている…-。
会場ではローズヒップティーなど、さまざまな品種の紅茶が招待客に振る舞われていた。
ジョシュア「紅茶は茶葉やブレンドの仕方によって、その味わいを無数に生み出すことができます。 そういった意味では、錬金術と通じるところもあるのではと、私としては感じています」
ジョシュアさんの毅然とした演説に、その場にいる誰もが耳を傾けている。
(素敵だな……)
鼓動が速まる一方、非の打ちどころがない彼を見ていると……
(私ももっと……ジョシュアさんに認めてもらえるような、立派な女性になりたい)
そんな思いに駆られ、落ち着かない気持ちになってしまう。
来賓の男性「これは美味い。心なしか、気分が落ち着いたようだ。香りもたまらないね」
〇〇「あ……それは、ベルガントで一年に一度採れる茶葉なんです」
来賓の男性「ほう。ブレンドは何を?」
〇〇「ブレンドはオランジェットの茶葉を…-」
少しでも役に立ちたいと、私は紅茶に舌鼓を打つ男性の質問に応じた。
(ジョシュアさんが持ってきた紅茶……聞いておいてよかった)
来賓の男性「いいなあ。この紅茶を気に入ったよ。是非うちの国にも仕入れたいんだが」
〇〇「すみません。私はベルガントの人間ではなく……」
いきなりの申し入れに驚いた私は、慌ててジョシュアさんを呼んだ。
ジョシュア「〇〇? これは…-」
〇〇「この方が、紅茶を仕入れたいと」
すると私達のやり取りを見ていた男性が、慌てて頭を下げた。
来賓の男性「失礼いたしました。お詳しいものですから、てっきりベルガントのお嬢様かと」
ジョシュア「……彼女は違います」
(え……?)
一瞬、彼の瞳が剣呑に光ったように感じた。
けれど……
ジョシュア「いえ……お話は、私の従者が承ります。 ありがとう、〇〇。後はオレが」
すぐに柔らかい笑みを向けられ、私はほっと胸を撫で下ろした。
〇〇「ありがとうございます」
ジョシュア「……うん」
頷きを返すけれど、ジョシュアさんはそっけなくつぶやいて私に背を向けてしまう。
どこか喜んでもらえるという期待があったせいか、ジョシュアさんの浮かない表情が心に引っかかる。
(出すぎた真似……だったかな)
私は少し離れたところで、従者さんと話をする彼を見つめていた…-。