第3話 成長の成果

パーティ会場の喧噪が、私の胸をざわめかせる…-。

貴婦人「まったく! どこのお嬢さんかしら……不注意にもほどがあるわ!」

声を荒げた貴婦人は、その場で立ち止まったまま私を睨んでいる。

(どうしよう……)

招待客1「おい、今のって…―」

招待客2「ああ、どう見てもあのお嬢さんは悪くない……」

ぼそぼそと声が聞こえてくるけれど、貴婦人の剣幕からか、皆は場を静観していた。

(ここで騒ぎになったら、一緒にいるジョシュアさんにまで迷惑がかかってしまう)

焦る気持ちを抑えるように、小さく息を吸い込んだ時…-。

ジョシュア「失礼ながら…-」

貴婦人からかばうように、ジョシュアさんがすっと私の前に立った。

(ジョシュアさん……!)

私は急いでスカートの裾を摘まみ、貴婦人に向かって身を低くする。

〇〇「申し訳ありませんでした」

ジョシュア「……!」

私を見て、ジョシュアさんが言いかけた言葉を呑む。

貴婦人「ふん。そんなふうに謝られても…-」

招待客1「いや、彼女は悪くない。ぶつかったのは、あちらの女性の方だ」

なおも不機嫌そうに眉をひそめる貴婦人に、事の顛末を見守っていた周囲の人が口を開き始めた。

招待客3「その通りです。私も見ていましたわ」

貴婦人「……っ!」

次々に上がる擁護の声に、貴婦人は身を小さくすると、すごすごと去って行く。

それにほっと息を吐いて、私はジョシュアさんを見上げた。

〇〇「ごめんなさい、ジョシュアさん、騒ぎを…-」

ジョシュア「……」

ジョシュアさんの手が、ふわりと私の頬を優しく撫でてくれた。

〇〇「ジョシュア……さん?」

柔らかく細められる彼の瞳に、私の姿が映っている。

ジョシュア「美しかったよ。つい見惚れてしまった。 ……君はいつの間にか、立派なプリンセスになっていたんだね」

胸が大きく一つ鳴って、頬に熱が集まっていく。

(きっと、真っ赤だ……)

恥ずかしくて、思わずうつむきそうになるけれど……

ジョシュア「……」

(ジョシュアさん?)

ジョシュアさんの切なげな眼差しが、ふと気になった。

(どうしてそんな顔を……?)

なぜだか彼が悲しんでいるように見えて、私は…-。

ジョシュア「……っ」

じっとジョシュアさんの瞳を見つめてしまうと、彼はハッとして私から顔を逸らした。

ジョシュア「〇〇……」

温かなジョシュアさんの手が、熱を残して頬から離れていく。

ジョシュア「オレがついていながら、ごめん」

〇〇「いえ、そんな…-」

彼がふっと息を吐いたかと思うと、次の瞬間にはもうその顔に綺麗な笑みが浮かんでいた。

ジョシュア「それにしても……君はいつも、何かと騒ぎに巻き込まれがちだね」

〇〇「そ、そうでしょうか……?」

ジョシュア「そうだと思うよ。 その度にドキドキする、こっちの身にもなってほしいな?」

〇〇「……すみません」

恐縮していると、ジョシュアさんがくすりと上品に笑って……

ジョシュア「君が魅力的だから……人の目を引いてしまう。まるであのクリムライトみたいだ」

〇〇「え?」

ジョシュア「いや……」

あくまで自然な仕草で、ジョシュアさんは私を守るように、腰をしっかりと抱き寄せる。

ジョシュア「行こう。さっきみたいな失態はもうしない」

〇〇「あれは、私が…-」

ジョシュア「ここは、レディを守ろうとする男を立ててくれると嬉しいんだけど?」

すぐ耳元で囁かれる内緒話のような声が、鼓膜を甘くくすぐってくる。

〇〇「! あの……じゃあ、お願いします」

ジョシュア「お任せください、姫」

ジョシュアさんに守られながら、私は流れるようにパーティ会場を歩いた。

(ジョシュアさんといると、本当に安心できる)

隣にいる彼の存在の大きさに、甘えたい気持ちが込み上げてくる。

(今までも、いろんなことを教えてもらった。でも……)

(助けられるばかりじゃなくて、彼の横に並びたい)

私の中に芽生えていたその思いは、いつしかとても大きくなっていた…-。

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