クリムパーティは数日間に渡って開催される。
その華やかな会場にジョシュアさんと一緒にやって来た私は、場の熱気に圧倒され、わずかに顔を強張らせた。
〇〇「なんだか……落ち着かない雰囲気ですね」
ジョシュア「それはそうだよ。皆、クリムライトの交易権欲しさで、内心は躍起になってるから。 中にはパーティへ参加せず、錬成方法探しを優先する人達だっているみたいだし」
ジョシュアさんが呆れたようにため息を吐く。
ジョシュア「まったく……礼儀を欠くようなことは、許せないな」
眉を少しひそめる彼を見て、私は…-。
(ジョシュアさん……)
さっき言われたことを思い出し、私はジョシュアさんにだけ聞こえるように囁いた。
〇〇「ジョシュアさん、笑顔でいないと」
ジョシュア「……言ってくれるね」
彼は気を取り直すように、一つ小さく息を吐いた。
ジョシュア「……オレとしたことが、君に気を使わせてしまったようだね」
綺麗な笑みを浮かべるジョシュアさんの表情に、私は胸を撫で下ろした。
ジョシュア「優しき姫君、お手をどうぞ?」
優雅に差し出されたジョシュアさんの手を取り、背筋を伸ばして歩き出す。
(こういうの……前はすごく緊張したけど)
ジョシュア「落ち着いているね」
〇〇「はい。ジョシュアさんにたくさん教えてもらいましたから」
ジョシュア「そう。厳しくした甲斐があったかな」
すぐ傍で、彼が嬉しそうに目を細める。
こうして自然に隣にいられるようになったことを、とても嬉しく感じていた…-。
…
……
クリムライトが展示されている場所は、すでに大勢の人で賑わっていた。
魔性の輝きを帯びるクリムライトに、観衆はまるで催眠術にでもかかったかのように釘付けになっている。
(赤い光がこぼれてる……なんて綺麗なんだろう)
人垣の外から見ているのに、その輝きが二つとない美しいものであることがわかる。
思わずため息を吐いて、前へ進もうとすると……
ジョシュア「改めて、これを生み出せるなんてすごいと思うよ」
凛とした声が耳に届き、ハッとジョシュアさんを見上げた。
ジョシュア「同じ王子として、オレも負けていられないな」
いつになく勝気なジョシュアさんの横顔を、ドキドキしながら見つめていると……
〇〇「……っ!」
いきなり肩に衝撃が走った。
貴婦人「あなた……気をつけてくださいませ!」
見れば、クリムライト見たさに前へ出ようとした貴婦人が肩をぶつけてきたらしい。
貴婦人「まったく! どこのお嬢さんかしら……不注意にもほどがあるわ!」
ジョシュア「……」
苛立ちに溢れる彼女の様子に、ジョシュアさんは鋭い視線を向けていた…-。