錬金術の国・アルケミア 虹の月…-。
アルケミアのルルスが新たに錬金に成功したという『クリムライト』……
見ればたちまち魅了されてしまうというその石をお披露目するパーティ……
赤をドレスコードとする『クリムパーティ』に、私は招待されていた。
けれど…-。
ジョシュア「……なるほど、貴重なお時間をいただきありがとうございました」
私と同じく今回クリムパーティに来賓として招かれたジョシュアさんが、その理知的な目を細める。
錬金術師さんに会釈する彼の仕草のひとつひとつは、相変わらずとても優美だった。
〇〇「どうでしたか?」
ジョシュア「知れば知るほど興味深いよ。錬金術……さまざまな物質を精錬する秘術、か。 けど、クリムライトの錬成については今のところ手がかりなしかな」
〇〇「……そうですか」
私達は今、クリムライト錬成についての情報を集めていた。
実は、ルルスがクリムライト錬成の方法がわからなくなった、と言っているらしく……
ジョシュア「ルルス王子は天才錬金術師だと聞く。わからなくなった、とはただごとじゃないだろうね」
〇〇「はい……」
アルケミア王家は、ルルス王子にその錬成方法を思い出させた者にクリムライトを譲渡し、そして交易権を与えるという異例のお触れを出していた。
ジョシュア「交易権は確かに魅力的だけど、あの美しい石を錬成する方法が純粋に知りたいかな。 もちろん、簡単ではないだろうけどね」
〇〇「……そうですよね」
ジョシュア「……」
ふと、ジョシュアさんの指先が私の顎を持ち上げる。
〇〇「ジョシュアさん……?」
不意に顔が近づいて、胸がとくんと高鳴った。
ジョシュア「レディはいつだって、笑顔でなければいけない。 オレが教えたこと、もう忘れちゃったのかな?」
そう言って、ジョシュアさんがくすりと優雅に笑みをこぼす。
〇〇「い、いえ!」
頬が熱を帯びていくことを自覚しながら、私は慌てて笑みを作る。
すると…-。
ジョシュア「ふふっ……よくできました」
甘い笑い声が、私の耳をくすぐった…-。