第5話 愛を伝えたい人

迷子の男の子と一緒にチョコレートを選んだ後…-。

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マーチア『じゃ、お母さんはオレが探してきてあげるよ。 君はこの子とチョコレートでも食べながら待ってて!』

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マーチアの言葉に甘えて、私と男の子はベンチに座って待っていた。

太陽が傾き、広場にいた人も随分と少なくなっている。

(マーチア、大丈夫かな……)

不安が大きくなってきた、その時…-。

マーチア「〇〇ちゃん!」

明るく弾んだ声に名前を呼ばれて、はっと顔を上げる。

すると、マーチアが眼鏡をかけた女性を連れて来るのが目に入った。

男の子「おかあさん!」

母親「ああ、ごめんね……! お二人共、本当にありがとうございました!」

〇〇「いえ。私は何も」

母親にしがみついた男の子の目線に合わせて膝を屈め、私はもう一度だけ彼の頭を撫でた。

〇〇「お母さん、見つかってよかったね」

男の子「うん! ありがとう、お姉ちゃん。お兄ちゃん」

マーチア「どういたしまして♪ もうはぐれちゃダメだよ?」

それに応えるように、母親がしっかりと男の子の手を握って歩き始める。

マーチアと私は、そんな二人が見えなくなるまで並んで見送った。

〇〇「マーチア、ありがとう。お母さんを見つけてくれて」

マーチア「なんで君がお礼を言うの? 別に、たいしたことはしてないよ」

軽い口調だけど、マーチアはまだ少し息を切らしている。

(ずっと……走り回ってくれてたんだ)

胸に温かな想いが込み上げ、私はマーチアに微笑みかけた。

〇〇「ううん。本当にありがとう」

マーチア「〇〇ちゃんも、あの男の子の相手、大変じゃなかった?」

〇〇「ううん。むしろ楽しかったよ」

マーチア「まあ、君はそうか……そういえばあの子、随分〇〇ちゃんに懐いてたよね。 君がいいお嫁さんになりそうって思ったこともあったけど。 いいお嫁さんだけじゃなくて、いいお母さんにもなりそうだよね~」

意味ありげな視線を送ってくるマーチアに、私は……

〇〇「どうかな、まだ全然想像できないから」

マーチア「ううん、なるよ」

マーチアの声がふと低くなって、私は思わず彼を見つめた。

(マーチア……?)

沈黙が訪れ、私達を覆う。

夕陽がマーチアの顔を切なげに照らしていて、なぜだか胸が締めつけられた。

マーチア「君はさ、愛の日に好きって言いたい人、いるの?」

〇〇「え……?」

マーチア「ねえ、教えて?」

(それは…-)

突然に尋ねられて、想いが上手く言葉にならない。

(私は、マーチアのことが……)

マーチア「〇〇ちゃん?」

言葉を探している私の顔を、マーチアは心配そうに覗き込んでくるのだった…-。

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