第4話 親子みたい

チョコレートを選んだ後、私達は空いているベンチに腰を下ろしていた。

マーチア「〇〇ちゃん、はい」

隣から、マーチアが先ほど買ったチョコレートを私に差し出してくれる。

〇〇「でもこれは、お茶会用じゃ…-」

マーチア「もっちろん、今ここで食べる分も買ったに決まってるじゃん。 〇〇ちゃんとのデートなんだからね。ささ、開けて開けて」

〇〇「ありがとう……マーチア」

そっと蓋を開けると、美しく並べられたチョコレートが目に入った。

マーチア「ほらほら、食べてみてよ」

光沢のあるチョコレートを一粒摘んで、そっと口に含む。

〇〇「おいしい……!」

マーチア「あははっ、かわいい顔しちゃってさ! そんなにおいしい?」

〇〇「……!」

気恥ずかしさに、私は思わず顔を伏せてしまった。

マーチア「……本当に、愛らしいだから」

マーチアがくすりと笑った気配がして、頬がますます熱くなる。

彼はそんな私に気づいているのか、いないのか……

マーチア「ねえねえ、ちょっとオレにもちょうだい! あ! せっかくだから食べさせてよ♪」

無邪気にそうお願いしてきた。

〇〇「……うん、わかった」

恥ずかしさを感じつつも、マーチアがそうしたいならと、おずおずとチョコレートを摘まむ。

マーチア「ふふっ……」

口を開けて待つ彼に、私はそっと一粒差し入れた。

マーチア「……ありがと。たぶん、普通に食べるよりずっとずっとおいしいよ」

〇〇「もう……からかわないで」

マーチア「あれれ? オレ、本気なんだけどなあ」

マーチアの唇に触れた指がなんだか熱くて、思わず彼から視線を外す。

すると、見覚えのある姿が視界の端に映った。

(あれ? あの子って……)

広場の隅で、先ほどぶつかった男の子が一人ぽつんと立ち尽くしている。

今にも泣き出しそうな雰囲気を湛えている彼に、私は慌てて駆け寄った。

〇〇「どうしたの?」

男の子「……おかあさんが、見つからないんだ」

ずっとこらえていたのか、男の子の瞳から涙が溢れて止まらなくなる。

マーチア「どうかした?」

〇〇「この子、お母さんとはぐれちゃったみたいで……」

やってきたマーチアに説明すると、彼は大きな目を瞬かせた。

マーチア「そっか。この人込みじゃ、すぐに探し出すのは大変そうだなあ」

その言葉に男の子が大きくしゃくり上げる。

私はなんとか彼を安心させたくて、優しく頭を撫でた。

〇〇「大丈夫。私と一緒に、お母さんを探そう? そうだ、お腹すいてない? チョコレート買いに行こうか」

男の子「うん……」

〇〇「あと、お母さんのこと教えてくれる? 途中で見つかるかもしれないから」

男の子「うん、えっとね。髪は長くてね、眼鏡をかけてて…-」

たどたどしくも一生懸命に話す男の子と手を繋いで、出店に向かって歩き始める。

マーチア「……」

ふと振り返ると、マーチアがぼんやりとした様子で私を見つめていた。

〇〇「マーチア?」

マーチア「……なんか君ってほんと、そーゆうとこあるよね」

〇〇「え?」

マーチア「ううん、なんでもないよ」

マーチアは口元に笑みを浮かべると、男の子の横に並び、私とは反対側の手を繋いだ。

店員「若いパパとママですね」

〇〇「え!?」

出店の店員さんにそう言われ、思わずマーチアの方を見ると……

マーチア「パパとママ、かあ……」

彼はアーモンド型の瞳をさらに細めて、優しげな笑みを浮かべていたのだった…-。

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