第2話 オレを見て

愛の日が間近に迫るガルティナの街は、たくさんの恋人達で賑わっている。

マーチア「ねえ見て! あのスノウクリスタル、すごく綺麗だよ! あっ、あそこでチョコレートも売ってる! 今しか買えなかったりするのかな!?」

マーチアは宝石店のショーウィンドウやチョコレートショップを見つけては、きらきらと目を輝かせて、楽しそうにはしゃいでいた。

(なんだかこっちまで嬉しくなっちゃうな)

彼の横顔を見つめながら、浮き立つ気持ちを感じていると……

〇〇「っ!?」

何かに勢いよくぶつかられて、はっと視線を前に戻す。

すると、目線の少し下に息を切らした男の子が立っていた。

男の子「ごめんなさい!」

〇〇「ううん、私こそ…-」

慌てた様子で頭を下げたかと思うと、男の子はそのまま脇目も振らずに走り出した。

(あんなに慌てて、どうしたんだろう……?)

首を傾げつつも、小さな背中はどんどん遠くなり、やがて見えなくなってしまった。

マーチア「〇〇ちゃん、大丈夫だった?」

〇〇「あ、うん……ごめんね」

マーチア「気をつけてよね、もう。君が怪我とかしたら、オレ泣いちゃうからね!?」

少し大仰にそう言って、マーチアが私に手を差し出してくれる。

〇〇「ふふ……ありがとう、マーチア」

その手をしっかり取って、私達はまた歩き出す。

しばらく歩いていくと、小さな食器店が目に留まった。

(わあ、綺麗なティーカップ)

店のショーウィンドウには、宝石をあしらったティーカップが飾られている。

マーチア「へえ? いいじゃん、綺麗だし派手だし! 見てみようよ!」

一目で気に入ったらしいマーチアに手を引かれるまま、私は店内に足を踏み入れた…-。

……

店内には、色とりどりの小さな宝石に縁取られた陶器のカップが並んでいた。

(どれもすごくかわいい。素敵だな)

その中の一つを手に取って、カップを見つめていると……

マーチア「ちょっとちょっと、〇〇ちゃん!」

なぜかマーチアが不満そうに唇を尖らせていた。

〇〇「どうしたの?」

つい先ほどまで上機嫌だったとは思えない様子に、おずおずとマーチアをうかがう。

マーチア「確かにそれ、綺麗だけどさあ。 ティーカップもいいけど、オレの魔法も見てみない?」

言うや否や、マーチアが指を擦り合わせてパチンと音を立てる。

すると、私が手に持っていたティーカップや、店中のカップ達が楽しそうに踊り出した。

〇〇「すごい……!」

店主さんも他のお客さんも、マーチアの魔法に驚きながらも笑顔を浮かべていた。

夢のような光景に思わず拍手をしながら彼を振り返ると…-。

マーチア「ね? オレの方がすごいでしょ!?」

満面の笑みを浮かべながら、マーチアが私に顔をぐっと近づける。

マーチア「だから、そうやってオレの方だけ見て笑っててよ! 君の笑顔はすっごくかわいいし、結構好きだからさ。一緒にいると楽しいしね!」

マーチアはそう言って、私の頬に軽くキスを落とした。

〇〇「……!」

マーチア「あはは、照れた顔も好きだよ。かーわいいっ!」

間近に迫る笑顔と、頬に残る彼の唇の感触に、私の胸は慌ただしく鼓動を刻み始めるのだった…-。

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