第3話 気になる実

部屋に、サキアの袖から取り出した薬草や木の実の微香が漂っている。

サキア「うん。この袖のところとか、あわせのところー……物をしまっておけるから」

サキアらしい感想に思わず笑ってしまうと、彼は不思議そうに首を傾げた。

サキア「あれ? ここを物入れにするのは……ダメ?」

〇〇「ううん。男性の着物は、懐や袂を物入れにできるようになってるんだよ」

サキア「そう……でも、じゃあなんで笑ったのー……?」

〇〇「ごめんね。着物姿のサキアは、なんだかいつもと雰囲気が違うのに……。 話したらいつのもサキアだったから、なんだか不思議な気持ちになって」

サキア「うーん……」

サキアが袖に腕を入れて考え込む。

サキア「違う……どう違うの?」

さらりと前髪が揺れて、一瞬だけ彼の綺麗な瞳が覗いた。

胸がドキリと音を立て、私は…-。

〇〇「サキアが……格好よく見えて……」

語尾にいくほど声が小さくなって、最後まで言い切ることができなかった。

そんな私を見て、サキアは嬉しそうに微笑んでいる。

サキア「あなたって……本当にかわいいね。 あ、わかったー……着物姿のあなたは綺麗……けど、かわいらしい。そういうことだよね……?」

〇〇「……っ」

サキアの綺麗な笑みに息を詰めた、その時…-。

従者「サキア様、〇〇様」

襖の外から、従者さんの声が聞こえた。

従者「雨が上がりましたので、お茶会を野点で行うこととなりました。 準備に今しばらくかかりますので、よろしければお庭をご覧になってください」

サキア「庭を……」

従者さんの提案にサキアの顔がぱっと明るくなる。

その目は長い前髪に隠れているけれど、きらきらと輝いていることが手に取るようにわかった。

(……かわいいな)

大人っぽいと思ったり、かわいいと思ったり……

いろんなサキアの表情が、心をやけに騒がしくさせた…-。

……

緑の瑞々しい香りが立ちのぼる雨上がりの庭を、サキアと一緒に歩く。

サキア「『のだて』っていうのは……外でやるお茶会のこと?」

〇〇「うん、ピクニックみたいに敷物を敷いて、外でお茶会をするんだよ」

サキア「楽しそうだね……天孤の国に来る前に、お茶の作法……勉強したんだけど……。 すごく難しそうだったから……ちょっと、気が楽になった」

それからしばらく、二人で野点を楽しみにしながら庭を散策していると、見慣れない植物を見つけた。

(あれ、この実はなんだろう? かわいいな)

山葡萄のような実が鈴なりに生っているのを見つけて、サキアの着物の袖を引く。

〇〇「サキア、あの植物が何かわかる?」

サキア「……」

サキアはなぜか驚いたように私を見て……

サキア「あ、ごめん……あなたが頼ってくれるのが、ちょっと……嬉しかった」

はにかんだように笑いながら、サキアが実に視線を移す。

サキア「でも、ごめん……僕も初めて見る……」

サキアは実に顔を近づけ、さっそく調べ始める。

サキア「何か、薬に使われたりするのかな……匂いを嗅いだ感じでは、毒性はなさそうだけど……」

〇〇「……大丈夫?」

不安になって思わず問いかけると、サキアは袂で手を包んで、そっとひと房その実を手折った。

その拍子に、実についていた雨粒がきらりと綺麗に弾ける。

サキア「詳しく調べるのは……後で、聞いてからにするね」

〇〇「うん……」

彼の袖にしまわれる実が、なぜだかひどく甘美なものに見えた…-。

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