木々の緑が、青空から降り注ぐ雨粒を弾いている…―。
フォーマ「静かだな……」
○○「うん、そうだね」
街を出た私達は、森を散策していた。
フォーマ「雨が降ると人のざわめきがなくなるから好きなんだ」
耳を澄ますと、葉に落ちる雨粒の音だけが聞こえる。
フォーマ「それに、この国の人からはあまり負の感情を感じない。静かだ……」
静寂に溶けていく彼の言葉が、切なく胸に響いた。
(そういえば、茶室でも……)
ーーーーー
フォーマ「ここは……静かでいいな」
ーーーーー
どんなに少量の毒でも察知することができるフォーマは、それと同じように、他人の隠し持っている負の感情も察知してしまう能力がある。
(だから、静かな場所だと安らぐんだろうな……)
私は複雑な気持ちを抱えながら、森へと視線を向けるフォーマを見つめた。
フォーマ「……こうして君と落ち着いた時間を過ごすことができるなんて、思いもしなかった」
穏やかな笑みを浮かべる彼が、私の手を包み込むように握る。
○○「……!」
フォーマ「嬉しいよ」
彼の大きな手の温もりに、鼓動がどくんと跳ねた。
○○「……私も」
フォーマ「君は本当に不思議な人だ。傍にいるだけで、心がすっと軽くなる」
静かに紡がれる言葉が、私の頬を熱くする。
フォーマ「雨の日も意外と悪くないだろう」
傘を傾けると、彼は笑顔で天を仰ぐ。
太陽の光が、雨粒と彼の顔を美しく縁取っていた。
○○「うん。フォーマ、雨の日が本当に好きなんだね。 今日、すごく楽しそうだから
フォーマ「それは……君が隣にいるからだ」
○○「えっ……?」
驚く私を見て、フォーマがくすりと笑みをこぼす。
フォーマ「君は心が綺麗だけど、鈍いのは少し問題だな」
(鈍いって……)
フォーマ「でもそうやって、すぐに顔に出るところが僕は…―」
飛び立つ鳥の羽音が、フォーマの言葉を奪ってしまった。
フォーマ「行こう」
言葉の続きが気になったけれど、いつもより大人っぽいフォーマの微笑みに心を奪われて、何も告げることができず……
私は彼に寄り添い、雨の音に耳を傾けながら歩き出したのだった…―。