第3話 運命の出会い

降り注ぐ穏やかな雨が、地面を優しく濡らしている…―。

お茶会が終わった後、私は約束通りフォーマと二人で街に出かけた。

(まさかフォーマとこんなふうに歩くなんて……)

ーーーーー

フォーマ「傘なら……大きいものを用意したから一つで大丈夫だと思う」

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彼と同じ傘に入りながら、しとしとと雨の降る街を歩く。

そのことが、私の鼓動を速くさせていた。

(……フォーマに、聞こえてないかな)

高鳴る鼓動を落ち着かせながら、同じ傘に入る彼を見上げた時……

フォーマ「濡れてしまうから、もっとこっちへ」

彼は私の肩に手をあて、引き寄せる。

突然縮まった距離に、胸はさらに大きな音を立てたけれど……

フォーマ「……こうすれば君の近くを歩ける」

見上げると、すぐ傍にあるフォーマの顔は赤く染まっていた。

○○「ありがとう……いいね、こういうの」

フォーマ「よかった。僕もこうして君と歩きたいと思っていたから」

視線が絡み合い、どちらからともなく笑みがこぼれ落ちた。

フォーマ「それにしても……毒薬の国とは全然違った文化で面白いな」

狐の耳や尻尾を持った人々に、初めて見る植物や建物……

情緒のある街並みを、彼と二人で見渡す。

○○「綺麗な街並みだよね。来る時に見た森の植物も豊かで……」

フォーマ「薬が発展しているのも頷ける」

古い石造りの壁には深緑の蔦が伸びて、朱色の花を咲かせている。

先の空き地には、紫色の小さな実をたくさんつけた木が見えた。

フォーマ「実は招待を受けた時、この国の植物を見せてほしいとお願いしていたんだ」

○○「植物を?」

フォーマ「薬は毒と非常に似ている。国に何か持ち帰ることができたらと思って」

○○「ここの植物が役に立つといいね」

フォーマ「ああ、そうだな……ん?」

ぴたりと、フォーマが立ち止まる。

○○「フォーマ?」

フォーマ「この香りは……」

彼の視線の先には、一軒のお店があった。

○○「お菓子屋さんみたいだね」

(でも、なんだか香ばしい香りがする……?)

フォーマ「少し覗いてみないか?」

○○「うん、いいよ」

フォーマと一緒に、お菓子屋さんの軒先へと近づく。

先ほどのお茶会で出たような美しいお菓子や、素朴でおいしそうな大福と一緒に並んでいたのは……

フォーマ「やはりパンか。天狐の国にもパンがあるなんて」

こんがりと焼けた小麦色のパンを目にしながら、フォーマは驚いたような顔をしていた。

店主「以前、砕牙様が持ち帰ってくださったパンを元に開発した『あんぱん』でございます」

フォーマ「あんぱん……? それは、どんなパンなんだ? カスタードクリームが入ったパンなら食べたことがあるが……」

フォーマが眼鏡の中央を押し上げながら、あんぱんを興味深そうに見つめる。

○○「あんこが入ってるんだよ。さっき、お茶会でいただいたお菓子にも入ってた…―」

フォーマ「なるほど、あれか。他国の文化を取り入れて新しいものを生み出すとは……素晴らしいな」

納得したように頷く彼だったけれど、その視線はずっとあんぱんに注がれていた。

○○「買ってみる?」

フォーマ「ん? ああ……そうだな。 しかし……確かに餡はおいしかったが、本当にパンと合うんだろうか?」

少し不安そうな彼を見て、私と店主さんは思わず吹き出してしまう。

店主「どうぞ。お好きなだけ試してみてください」

店主さんが、試食用に切り分けたあんぱんとお茶を差し出してくれた。

フォーマ「ありがとう」

○○「いただきます」

手に取っていただくと、パンの香ばしさと、しっとりした粒あんの甘さが口に広がる。

フォーマ「……これは……おいしいな。小麦とも合うなんて、餡は優秀だ」

○○「うん、おいしいね」

フォーマ「土産に買っていこう」

見るからに嬉しそうなフォーマの姿を見て、私も嬉しくなる。

(こんな時間がずっと続けばいいのに……)

私は口に残る優しい甘さを感じながら、彼との穏やかな時間を噛みしめていたのだった…―。

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