第5話 傷ついた表情に

窓の外を、白い綿のような雲がゆっくりと流れていく…-。

私は客間に通され、ロイエさんが戻るのを待っていた。

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ロイエ『ルグランジュと、すぐに会談の進行について話さなければならない。 申し訳ないが、少し待っていてくれるだろうか』

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意気揚々と会談の準備に戻っていったロイエさんの姿を思い出し、ふと口元が緩む。

彼の執事さんがティーカップに紅茶を注ぎ、柔らかな香りが広がっていく。

執事「申し訳ございません。ロイエ様は思い立ったらすぐに行動する方で……」

〇〇「いえ、大丈夫です。たくさんお話できましたから。 これをいただいたら、宿泊先に戻ります。話し込んだら、きっと長くなると思いますし」

執事「よくロイエ様のことをご存じですね」

〇〇「え……」

執事さんに嬉しそうに微笑まれ、なんだかくすぐったい気持ちになったその時…-。

ロイエ「すまない。待たせてしまった」

扉が開き、ロイエさんが姿を現した。

〇〇「お話、もっと時間がかかるかなって思ってました」

ロイエ「いや、話す以前にルグランジュに会えていない」

〇〇「え?」

ロイエさんは表情を変えずに、私の向かいに腰を下ろす。

ロイエ「僕に相談なく、一人で会談のための情報収集へ出かけたらしい」

〇〇「そうなんですか……」

ロイエ「今まで事細かく相談に乗っていた。不要だと思えることすらルグランジュは僕に相談してきていた。 しかし今日、彼は一人で出かけた」

謎を追求するように天を仰ぐロイエさんは、どこか戸惑っているようにも見えて…-。

(もしかして、傷ついてる……?)

その新鮮な表情が、私の胸をわずかに軋ませる。

〇〇「あの、ロイエさん」

私は思わず、口を開いていた。

〇〇「ルグランジュくんをサポートしながら会談を成功に導くというのは、とても大変な役割だと思います」

ロイエさんは、驚いたように私に視線を戻す。

〇〇「でも、ロイエさんだからできることだと思います。私はそう信じていますから」

私を見つめるロイエさんの目は、まるで心の中まで探るように深い色を帯びていて…-。

ロイエ「君の言葉はいつも、論理性を欠いている」

こちらを見据えたまま、彼はゆっくりと言葉を紡いだ。

〇〇「そんなことありません」

図らずも強くなってしまった私の言葉に、ロイエさんはわずかに目を見開く。

ロイエ「ほう……」

〇〇「今までのロイエさんを見てきたから、そう思うんです。 確かに、ちょっと感情は入ってますけど……」

彼は口元に微笑みを湛えて、首を振った。

ロイエ「いや、君の感情は僕にはとても心地よい。 今は、君の言葉だけを聞いていたい」

ロイエさんは、穏やかな微笑みを浮かべて私を見つめる。

その和らいだ表情に、心に温もりが広がっていくのを感じていた…-。

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