第5話 ドレスの効能

歓迎パーティの準備をしてくれているのか、城の中は少しだけ慌ただしい。

少し恐縮しながら、部屋に戻ると…-。

メイド「〇〇様、どちらをお召しになりますか?」

そこには、ミリオンくんが用意してくれたドレスがずらりと並んでいた。

〇〇「なんだか申し訳ないです。ドレスまで用意していただいて……」

メイド「いいえそんな。ミリオン様も張り切って選んでおられましたよ。 〇〇様と出会ってから、ミリオン様はとても柔らかく笑うようになられて……」

メイドさんは嬉しそうにしながら、私にドレスを勧めてくれる。

メイド「そうだわ、ミリオン様はこのドレスを気に入っておいでのようでしたよ。 〇〇様に似合うだろうなとおっしゃっておられました」

〇〇「私に、ですか?」

メイドさんがにこりと笑って、私に一着のドレスを差し出す。

それは、花の刺繍が散りばめられた、少し派手な黒のイブニングドレスだった。

(……あまり着たことがないタイプのものだけど)

(ミリオンくんは、私に似合うと思ってくれたんだ)

彼の喜ぶ顔が見たくて、私はそのドレスをそっと手に取る。

メイドさんを見ると、彼女はすべて察したようににっこりと頷いてくれた…-。

……

ミリオン「〇〇、支度できた?」

しばらく経って、ドアの外から声が聞こえた。

私は緊張しながらも口を開く。

〇〇「……うん」

返事をするとメイドさんがそっとドアを開けた。

ミリオン「もうそろそろ時間だから、迎えに…-。 ……!」

ミリオンくんが、はっとした様子で私を見つめる。

淡く色づいていくその頬に、心臓がドキドキと早鐘を打ち始めた。

ミリオン「……どうして、それを選んだの?」

〇〇「その……自分では似合わないって思ったんだけど、ミリオンくんがいいって言ってくれたって聞いて。 私も、新しい服に挑戦してみようかなって思ったの」

素直に答えた私の元へ、ミリオンくんが黙ったまま近づいてくる。

(ミリオンくん……?)

ミリオン「……似合うと思ったんだ。 お前の綺麗な肌に、よく映えるだろうって」

腰を緩く撫でられて、無意識に体が跳ねる。

(からかってる、のかな……?)

いつもの調子で言ってるのかと思ったら、ミリオンくんは私を見て、どこか照れたように視線を逸らした。

(え……?)

ミリオン「……行こう」

丁寧に手を取られ、鼓動がまた速くなる。

ミリオン「今日はずっと、僕の傍にいて」

〇〇「え?」

思わず聞き返すと、ミリオンくんは眉根を寄せて、ぎゅっと手を握る力を強くした。

ミリオン「……こうしてないと、悪い虫が寄ってきた時に追い払えないだろ」

〇〇「……!」

つぶやくような声に、顔がひどく熱くなる。

〇〇「大丈夫だよ……」

ミリオン「……お前の大丈夫ほど当てにならないものはないからね」

ミリオンくんがゆっくりと、私の方に振り返る。

まっすぐな視線に捉えられ、体を動かすことができなかった。

ミリオン「……知らなかった。 お前って、こんなに綺麗だったんだ」

優しげな、少し恥ずかしそうな眼差しが……私の心を甘く蕩けさせていく。

彼の選んでくれたドレスが、夕陽の光を受けて艶やかに輝いていた…-。

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