部屋には、重苦しい空気が流れていた…―。
原因不明の病に倒れた私を前に、ハルとお医者様は、ずっと難しい顔をしている。
(ハル…―)
私の手を握ってくれたハルの顔を見上げた時……
ハルディーン「そういえば……モンスティートにはどんな病にも効く万能薬があるって聞いたことがあるぞ?」
医者「それは、かの凶暴なモンスター、ボルケウスの体液のことですかな?」
ハルの言葉に、お医者様は口元を隠して目を細めた。
ハルディーン「ボルケウスでもなんでもいい!万病に効くって言うなら、今すぐオレが捕ってきてやる!」
医者「なっ、無謀なことはおやめなさい!! ボルケウスと言えば、アヴァロン城のモンスター討伐部隊ですら手を焼く怪物ですぞ!?」
聞けばこのあたりの森の奥地に生息するボルケウスの体液は、万病に効く霊薬と言われているが、そもそも人前にはめったに姿を見せない幻の存在らしい。
医者「ちょうどアヴァロンの討伐隊も出発したばかりで……彼らもいない今、危険過ぎます……!」
ハルディーン「じゃあ、どうしろっていうんだよ!このまま黙ってろっていうのか!? ○○……っ」
ハルは複雑な表情で、悔しそうに私の名前を呼ぶ。
ハルディーン「オレは……呪いなんて信じてない……けど」
しばらくの間、無言のまま時が流れた。
ただハルはずっと私の手を握ったまま……。
ハルディーン「……○○」
その時、ふっと彼の表情が、らしくないほどに大人びた。
(……ハル?)
何故か胸の奥が締め付けられるように痛くなって、私は…―。
○○「お願い……無茶だけは、しないで……」
ハルディーン「無茶だなんて……オレはただオマエを助けたいだけだ……!」
苦しげな彼の顔に、言いようのない不安を感じ始める。
(そんな顔……しないで)
その時、ハルの瞳にそれまでとは打って変わって力強いものが宿った。
ハルディーン「……絶対オレが、オマエを助けてやるから」
○○「え……ハル……?」
ハルディーン「必ず……オレがボルケウスを見つけて、○○のところに持ってきてやる……!」
固い決意が込められた言葉は、胸を締めつける響きを持っていた…―。