妖刀の呪いか、それともただ運が悪かっただけか、ハルが数々のアクシデントに見舞われた後…―。
西日にあてられたのか、私はかすかな眩暈を感じていた。
(なんだか……身体がだるい)
○○「ねえ……ハル……私、少し…―」
ハルディーン「シュガーっ!?」
○○「あ……あれ、ハル……?」
気づけば私は、ハルの大きな体に抱き留められていた。
渦を描く視界に瞬きを繰り返せば、ハルが心配そうな顔で、私の額に手を伸ばす。
ハルディーン「すごい熱だ!おい、大丈夫か!?シュガー!」
○○「ご、ごめん、お医者……様を…―」
そう口にした瞬間、私の意識は、ぷつりと途絶えてしまったのだった…―。
…
……
意識が暗闇の中をたゆたって、しばらくして目を開くと…―。
○○「あ……れ?ここは……」
ハルディーン「シュガー!目が覚めたのか!?」
目の前に飛び込んできたのは、心配そうに眉を寄せたハルの顔だった。
ハルディーン「ここはアヴァロンの城だ。オマエが倒れて、運び込んでもらった」
彼の隣には、お医者様らしき人の姿も見える。
ハルディーン「おい、オマエ医者なんだろう!?なんとかならないのかよ!」
医者「それがワシもこんな症状は今まで診たことなくての……」
言われてみれば、体はひどい寒気を感じており、呼吸をすることすら苦しい。
ハルディーン「おい、頼むよ!それでもオマエ医者かよ!!」
歯切れの悪い言葉に、ハルがお医者様の肩を揺さぶる。
○○「ハル……私なら大丈夫……だから……」
明らかに冷静さを欠いたハルに、私は弱々しい声で呼びかけた。
ハルディーン「何言ってんだよ、オマエ!自分の顔色がどれだけ悪いのかわかってないだろ!!」
(ハルの方こそ、顔が真っ青だよ……)
沈痛な表情に、胸が痛くなる。
医者「すまんの……ワシの腕がもっと良ければ…―」
言葉を紡ぎ切らないうちに、お医者様の目が、ハルの腰元に釘付けになった。
医者「……!!もしやその剣は、呪いの妖刀『ツインスレイヴ』……」
ハルディーン「は?」
途端にお医者様が難しい顔で唸る。
医者「聞いたことがありますな。昔その剣を持った若者の恋人が、原因不明の病で亡くなってしまったと……」
ハルディーン「なっ……縁起でもないこと言わないでくれよ!! 呪いなんて、そんなワケあるか!」
ハルの表情がさらに曇り、縋るように長い指先が私の手を握る。
(ハル……ひどい顔をしてる)
胸が痛くなって、彼の手を握り返すけれど、力が上手く入らない。
ハルディーン「……っ」
彼はいたわるように、私の手へもう片方の手を重ねたのだった…―。