人々でごった返すアヴァロンの市場…―。
そこで偶然再会したのは、紅茶の国・テイシャのハルディーン王子だった。
ハルディーン「これ、すっげーカッコイイだろ!」
私が興味を持つと、彼は得意げに手に持った二本の曲刀を見せてくれる。
ハルディーン「さっきそこの武器市で見つけたんだけど、なかなかオレ好みでさ。 この刀身に掘られた意匠なんて特にサイコーだろ!?」
○○「うん。でもなんだか……」
アヴァロンの強い日差しが、ハルの持つ剣の刀身に反射する。
その濡れた黒曜石のような輝きに、なぜだか胸がざわついた。
(なんだろう……この感じ)
ハルディーン「どうかしたか?」
不思議そうな瞳で、問いかけてきたハルに…―。
○○「ううん、なんとなくなんだけど、妙な感じがして……」
ハルディーン「そうか?オレは別に何も感じないけど」
もう一度、ハルがその剣を見て、首を傾げた時だった。
武器商人1「あ、あんた、その剣はもしや……」
ハルディーン「は?おっさん、オレの剣がどうかしたのか?」
市場に軒を連ねる店の主人が、ハルの曲刀を見て顔を青くする。
武器商人1「なっ、あんた何も知らないでこの剣を手にしてるのか! そいつは呪われた妖刀『ツインスレイヴ』だぞ!?」
ハルディーン「妖刀……」
○○「ツイン……スレイヴ……?」
聞き慣れない言葉に、私達は同時に名前を繰り返した。
その商人が言うには、ハルの持つ剣は二本で一組の呪われた妖刀で、これまで幾多の人々の血を吸ってきた、いわくつきのものらしい。
ハルディーン「またそんな冗談を……おっさん、性格悪いぜ?」
武器商人1「嘘なんかついてない! 俺はその剣のせいで、これまで何人もの持ち主がひどい目に遭ってきたのを知ってるんだ!!」
ハルディーン「へぇー……」
○○「へぇーって、ハルは平気なの?」
ハルディーン「うん、全然。手にしててもそんなイヤな感じはしないしな」
あっけらかんとして、ハルはお気に入りの曲刀を空に掲げる。
ハルディーン「それに、こういう珍しいモンを見つけてこそ、この国に来た甲斐があるってもんだろ!」
(本当に大丈夫なのかな?)
不安が胸に広がる中、妖刀と呼ばれた剣の黒い刀身を見つめる。
ハルディーン「まったくシュガーは心配性だな、大丈夫だって」
○○「あっ、ハルっ……」
太陽のような笑顔を浮かべて、大きな手が私の頭をくしゃりと撫でる。
(ハルが気にしてないなら、大丈夫なのかな?)
けれど、私達はまだこの時…―。
この妖刀が原因で大変な目に遭うなんて、思いもしていなかった…―。
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