第4話 僕がカツ丼でカツ丼が……

勝生勇利「ぼ、僕カツ丼になってるぅぅううう!?」

私は慌てて傍にしゃがむと、丼に器用にかかっている眼鏡の部分に目線を合わせた。

〇〇「その声は、やっぱり勇利さんなんですね!?」

異常な光景に焦りを感じているのに、卵でとじられたカツが艶々と輝く様子に食欲をそそられる。

(あ……そんなこと考えてる場合じゃなかった)

〇〇「この丼の眼鏡が、もしかして顔ですか?」

勝生勇利「眼鏡で判断!? それに、僕の顔そんな位置にあるの!? ってか、どうして!? カツ丼て……なんで!?」

〇〇「他人が思うイメージになる温泉だって、さっきガイドさんが…―」

ガイドさんの方を振り返ると、いつの間にか姿が見えなくなっていた。

〇〇「あれ……いなくなってる……」

ガイドさんを探そうと目を凝らすけれど、丼が岩にあたる音がして、慌てて勇利さんの方へ視線を戻した。

〇〇「勇利さん……?」

勝生勇利「僕のイメージって……カツ丼!? そりゃ、ユリオはカツ丼って呼ぶし、僕のエロスはカツ丼をイメージしてたけど……。 まさか本当にカツ丼になるなんて……」

カツが、丼からこぼれ落ちそうなほどご飯の上を滑っていく。

(もしかして……落ち込んでるのかな)

ただのカツ丼なのになんとなく感情が読み取れて、そんな自分が少し心配になるけれど……

(そんなこと気にしてる場合じゃないし……そうだ!)

〇〇「早く姿を元に戻さないとですね。誰か人を呼んできますね!」

勝生勇利「ごめん! お願い!」

慌てて立ち上がり、街の方へ走り出す。

けれど…-。

勝生勇利「うわぁ! 舐められたー!」

〇〇「勇利さん!?」

後ろから叫び声が聞こえ、ハッと振り向く。

猫又「にゃ~ん!」

二つの尻尾を揺らして、猫又が丼の上のカツに齧りつこうとしていた。

勝生勇利「しっ! しっ! お願い! 向こうに行って!」

〇〇「それ、食べないでください!」

慌ててカツ丼の勇利さんを持ち上げ、ほっと胸を撫で下ろす。

〇〇「……危うく猫の餌になってしまうところでした」

勝生勇利「それも生々しいけど……」

勇利さんの声に、はっと自分の口を手で押さえる。

〇〇「つい……」

勝生勇利「うん……だって、カツ丼だもんね……どっからどう見ても今の僕はおいしそうなカツ丼だし。 迷惑かけっぱなしだけど、誰かに戻る方法を聞きに行くなら僕も連れてって」

〇〇「もちろんです」

勇利さんカツ丼を両手でしっかりと持つと、私は人がいる方へと駆け出した。

手の中のカツ丼はおいしそうで、やっぱりこの状況の異様さにまた戸惑いを覚えた…-。

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