第2話 エロスで気まずいご飯!

思い切って勇利さんを誘ってみたのはいいけれど、特に会話のないまま時間だけが過ぎていく…-。

(気まずい……)

無言のまま向き合って座っていると、時計の音や周りの賑やかな声がやけに耳についた。

〇〇「お腹すきましたね……」

勝生勇利「そうだね……料理まだかな……」

〇〇「いい香りはしてきますね……」

勝生勇利「そうだね……ハハハ……」

乾いた笑い声が、私達を余計に気まずくさせていく。

その心苦しさに勇利さんも耐えかねているみたいで…-。

勝生勇利「……気まずい……会話が見当たらない……。 お腹すきすぎてうっかり一緒に来ちゃったけど、ただでさえ人見知りなのに。 こんなわけのわからない場所で、会ったばかりの女の子と二人きりとか。 気まずさが光の速さで限界に近づいているよ!」

〇〇「あの……勇利さん、心の声が漏れてますよ……」

私の声が聞こえていないのか、勇利さんは力尽きたように畳の上に倒れ込んだ。

(大丈夫かな……?)

少し心配になって、テーブルの向こうの勇利さんを覗き込もうとしたその時…-。

勝生勇利「あれ? なんでヴィクトルの写真が飾られてるの!?」

勇利さんは飛び起きると、飾られている写真を壁からもぎ取った。

横からそっと写真を覗き込むと……

ヴィクトルさんが、店主さんと仲良く肩を組んで写真に写り込んでいた。

〇〇「ヴィクトルさん、こっちの世界でもすでにスターですね」

勝生勇利「なんで初対面の人とこんな仲良く肩を組んで写真撮れるわけ??? しかもサインまでしてる……いいな、僕も欲しい」

(え? ……欲しい?)

〇〇「サインが欲しいんですか?」

勝生勇利「だって、ヴィクトルのサインだよ? 絶対欲しいに決まってるよ! もらえないかなー。 じゃなくて! なんであの人、こんな超満喫―って顔してんの!? ……やっぱり、ヴィクトルはすごいな。 どんな世界でも楽しめて、人を魅了しちゃうんだ」

写真を眺める彼の瞳に込められているものは、うらやましさを超える尊敬の念で……

〇〇「ヴィクトルさんは、すごい方なんですね」

勝生勇利「すごいなんてもんじゃないよ。世界中のフィギュアスケーターの憧れだよ!」

写真を抱きしめると、勇利さんは私の方にきらきらとした瞳を向ける。

勝生勇利「僕のスケート人生は、もう半分以上ヴィクトルを目指してきたんだ。 世界選手権5連覇した時のフリー『離れずにそばにいて』。 後半に入ってからトリプルアクセル、3回転ループ、3回転ループの超難しい3連続ジャンプ! くぅ~! 今、思い出しても泣けてくるー! しかもラストに43だよ!?」

(人が変わったみたい……だけど)

〇〇「勇利さんはヴィクトルさんのことが、本当に好きなんですね」

勝生勇利「え。あ、いや、好きっていうか……まぁそうだけど……」

照れながらも写真を手放さない勇利さんが微笑ましくて……

けれどその思いも虚しく、写真は料理を運んできた店員さんに奪われてしまうのだった…-。

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