ボディブルの城で再会したジェットさんに手を引かれ、城の廊下を歩く。
廊下には、映画関係の様々なトロフィーやメダルが飾られていた。
(すごい……数えきれないくらいのトロフィーが並んでる)
ジェットさんの話によると、ボディブルはビオスコープという連合組織に加盟しており、その組織は、世界中に優れた映画を輩出しているとのことだった。
ジェット「ビオスコープに加盟してる国の王族は、皆何かしら映画に携わってる。俺んとこの一族は、まあ……俳優として有名なワケ」
○○「そうだったんですね……」
整然とトロフィーが並ぶその景観に、思わずため息を漏らした時……
??「あらぁ、その子、ジェットのお友達?」
すらりとした体型の、長身で美しい3人の女性が、ジェットさんに声をかけてきた。
(すごく綺麗な人達……女優さんかな?)
ジェット「げっ!姉貴……いたのかよ」
○○「っ、お姉さん!?」
美しい女性…―ジェットさんのお姉さん達は、嬉々として彼と私を囲む。
(目の前で見ると、さらに綺麗……)
洗練された、けれど凄みのある美しさについ見惚れてしまう。
○○「こ、こんにちは」
ジェットの姉1「ええ、こんにちは、可愛らしいお嬢さん」
ジェットの姉2「ジェットがお友達を連れてくるなんて、珍しいこともあったものね。しかも女の子」
ジェットの姉3「カノジョかもよ!」
ジェット「……違うっての」
ジェットさんが、心底困り果てたようにため息を吐いた。
ジェットの姉1「それより、アンタまたオーディション断ったんだって?」
お姉さんのうちの一人が、咎めるような視線をジェットさんに向ける。
ジェットの姉1「アンタも才能はあるんだから、いつまでもスタントなんかに拘ってるのはやめなさいよ。お父様やお母様も期待してるんだから、早く演技に向かい合いなさい」
ジェット「……」
その言葉に、ジェットさんの表情が曇る。
ジェット「今は人が来てるんだから、控えてくれよ……それに、その話はもう、うんざりなんだよ」
ジェットの姉2「ジェット、お姉さまに向かってその口のきき方はないでしょう!?」
(どうしよう……何か事情がありそうだし……私が口を挟んじゃいけないよね)
黙って、ことの次第を見守っていると……
ジェット「もういい!おい、行くぞ!」
○○「え!?」
お姉さん達との会話を一方的に遮るようにして、ジェットさんに腕を掴まれた。
その腕にかけられた力が、さっきよりもずっと強くて……
(ジェットさん……?)
彼はそのままお姉さん達に背を向けて歩き出した…―。
……
お姉さん達から見えない所まで来ると、ジェットさんは立ち止まって頭を掻いた。
ジェット「わりーな、せっかく来てくれたのに変なこと見せちまって……ちょっと、ウチもいろいろあって……けど、見どころもある街だから、良かったら楽しんでってくれよ!」
ニカッと、ジェットさんが私に笑いかける。
けれど、どこかその笑顔が無理に作られたもののような気がして……
○○「……はい」
彼の言葉に頷くけれど、私はジェットさんの笑顔の奥にあるものが気になっていた…―。