正午より、儀式の出席者一人一人と、
水鏡の前で、運命の人探しが行われることとなった。
アフロスの神官「……では次の方」
ある国の貴族「私が、トロイメアの姫との婚姻……それが叶えば、我が国は安泰だ!」
○○「……」
何人もの出席者が、水鏡の前で列を作り、こうして一人ずつ確かめられていく。
アフロスの神官「残念ですが、映りませんな」
○○「はい……」
ほっと息を吐き出し、その場にある石のスツールに腰かける。
アヴィ「気に入らねえな……」
ずっと付き合ってくれていたアヴィが、吐き捨てるようにつぶやいた。
○○「付き合わせて、ごめんね」
アヴィ「気にするな。けど……。 お前も断ってよかったんだぞ」
○○「うん、でも……」
運命の人探しは、参列者の方々もぜひにと希望したらしい。
また、神官から『世界の人々の祝福のため』と言われると断り難かった。
アヴィ「なんか……お前の気持ち、無視してるみたいで」
○○「アヴィ……」
眉と目の間を狭めて、アヴィが小さく言う。
アヴィなりの気遣いが胸に痛い……
(運命の人……)
(……アヴィだったらいいのに……)
アフロスの神官「次はアルストリアのアヴィ殿、でしたな」
アヴィ「……」
○○「……!」
神官の声に呼ばれ、アヴィと共に水鏡の前に立つ。
緊張に胸の奥が騒ぎ出す。
(アヴィ……)
祈るような気持ちで、水の湛えられた鏡を見つめる。
水面は波紋を描き、やがてゆっくりと静止する。
しかし、そこにアヴィの像は映っていなかった…―。
(アヴィじゃ、ない……)
自分でも驚くほどに、胸の奥が苦しくなる。
私は無意識のうちに、たまらず……
○○「アヴィ……」
アヴィ「……俺じゃないみたいだな」
抑揚のない声からは、アヴィの感情は読み取れない。
気分が落ち込んでも、静々と運命の人探しは続けられていく。
アフロスの神官「……では次の方」
??「ふっ……ようやく僕の出番か」
(あ、この人は…―)
次に私の隣に立ったのは…―。
アフロスに来たときより、私に視線を投げかけていた男だった。
その時…―。
アフロスの神官「おお……水鏡がっ!」
○○「え……?」
水鏡の水面が激しく揺れ出し、隣に立つ男の像を映し出した。
??「素晴らしい! 女神は、トロイメアの運命の相手は、この僕だと仰せだ!!」
アヴィ「……! お前は…―!」
声高に叫ぶ男の顔を見たアヴィの表情が、険しく歪められた…―。