第3話 散りばめられた星

その後…―。

街の人々から『地上に流れる天』の情報を聞いて回り、私達がたどり着いたのは……

キャピタ「これが『地上に流れる天』……」

ガラッシアの東と西を分ける大河の前だった。

キャピタ「マッドハッターからは、星が河を流れるのだと聞いていたのだが……」

目の前に流れるものは、星ではなく……

キャピタ「まさか、このような結末だったとは……」

河を流れていくランタンを見つめながら、キャピタさんは落胆のため息を漏らした。

○○「……ランタンを星に見立てて流しているんですね」

キャピタ「確かに星のようには見えるが星ではない。ガラッシアの工夫とも言えるが……。 謎ではなかったようだな」

モノクルの奥の瞳が、大河を眺めて少しだけ陰りを見せる。

○○「……」

(これで、キャピタさんが求めていた謎は終わり……)

大河を見つめる聡明な横顔が、少し寂しげで……

○○「キャピタさん。せっかくなので、屋台のあるお祭り会場でもう少し楽しみませんか?」

キャピタ「屋台を楽しむのか?」

キャピタさんが不思議そうに私を見る。

○○「はい。フォルストとは違うこの国には……もっといろいろな謎があるかもしれません」

キャピタ「星の国、ガラッシアの謎……」

モノクル越しの彼の瞳が、一瞬輝いたように思えた。

キャピタ「それはいい。謎を見つけるのも、また醍醐味だ。 屋台へ戻る」

○○「はい……!」

二人で屋台が並ぶお祭り会場へと戻ろうとした時…―。

キャピタ「……」

キャピタさんが、大河の方を振り返る。

キャピタ「しかし、何故わざわざこのようなことを……?」

○○「キャピタさん?」

小さなつぶやきが聞こえ問いかけると、キャピタさんはそっと私の背に手を添えた。

キャピタ「いや。今は貴方が言うように屋台へと戻ろう」

○○「? はい……」

大河へとランタンを流しに来る人達とすれ違いながら、私達は会場へと歩みを進めた…―。

……

賑わいを見せる会場内へ着き、再びキャピタさんと屋台を巡る。

キャピタ「これは……」

不意に、キャピタさんがとある屋台の前で立ち止まった。

(あ……綿あめだ)

キャピタ「この機械……文献で一度目にしたことがあるが、実物を見るのは初めてだ」

キャピタさんが吸い込まれるように、綿あめの屋台に近づいていく。

キャピタ「……」

綿あめにじっと視線を落とすキャピタさんに、私は……

(今は、話しかけない方がいいかな……)

キャピタ「……」

棒に砂糖の糸を巻きつけていく店主さんの動きを、キャピタさんはじっと見つめ……

キャピタ「ざらめを入れると雲のような菓子ができるとは、不可思議な奇術か何かのようだ」

すると、そんなキャピタさんの様子を見た店主が笑い声を上げて……

綿あめ店主「ははっ! そんなに興味があるなら一つ作ってみますか?」

キャピタ「……いいのか? 是非挑戦してみたい」

○○「よかったですね、キャピタさん」

キャピタ「すまない、持っていてくれるか」

持っていた帽子を私に手渡しながら、キャピタさんは嬉しそうに頷いた…―。

……

無事に綿あめを作り終え、早速食べてみようとしたところで……

キャピタ「……」

キャピタさんが何かに気がついて動きを止めた。

キャピタ「ここにも星がある」

○○「星……?」

見れば、綿あめに、かわいらしく小さな星の砂糖菓子が散りばめられている。

○○「わあ……かわいらしいですね。星のお祭りだからでしょうか?」

キャピタ「至るところで、星を見かける。単に星祭りであるという理由だけだろうか? ○○は昨年も訪れたようだが、何か知っているか?」

キャピタさんに問われて、しばし記憶を巡らせた後……

○○「星祭りは年に一度の、ノーザンクロスという国も交えたお祭りで……。 今日この日だけ、ガラッシアの東国と西国が交流を許されるそうです」

すると……

綿あめ店主「そうそう、それに今年の主催はベガ王子だよ!」

店主さんが私達の話を耳にして、補足をしてくれる。

キャピタ「ベガ王子とこの多くの星の飾りは何か関係が?」

綿あめ店主「ベガ王子は我々の思いを理解してくれていてね。 もっと東西の交流が増えるようにって、一緒に頑張ってくださってるんだ」

キャピタ「王子と民が一丸となり、祭りを盛り立てているということか」

○○「心を一つにして頑張れるなんて素敵ですね」

キャピタ「……そうだな。人々の気持ちに寄り添うのは、そう簡単ではない」

キャピタさんは改めて、居並ぶ屋台を見渡す。

キャピタ「……」

その知的な瞳は、今ここにない何かを見つめているようだった…―。

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