第5話 ぼくにできることを

ペルラ「ぼく達が楽しんで、嬉しい……」

噛みしめるようなペルラさんのつぶやきが、耳に届く。

ペルラ「ぼく……このままでもいいのかな」

ふと、ペルラさんの視線が私に向けられる。

○○「ペルラさん……? 突然、どうしたんですか?」

いつになく真剣なペルラさんの様子に、私は目を見張った。

ペルラ「騒ぎにこそなっちゃったけど……ロトリアの人達、皆ぼく達のこと歓迎してくれていたよね」

ロトリアの街の人達が皆、私達に嬉しそうに手を振ってくれたことを思い返す。

ペルラ「驚いたんだ。まさか、ぼくなんかにあそこまで喜んでくれるなんて思わなかったから……。 ……すごく、嬉しいって思った」

○○「ペルラさん……」

ペルラ「国では……マルガリタでは、あんまりそういうことがなかったから」

ペルラの従者「ペルラ様……」

ペルラ「幸せの涙を流さなきゃいけないのに、ぼくにはそれができない…―」

ペルラさんは悔しそうに、長いまつ毛を伏せる。

ペルラの従者「ペルラ様、それは…―」

ペルラさんの一族は、幸せな涙を宝石に変えることで繁栄させてきた。

けれどペルラさんはその涙を流すことができず、負い目を感じていて……

ペルラ「……面倒だった。全部。 だから何もしようとしなかった。けど…―。 皆がぼくを歓迎してくれて嬉しかった。だからこの国のために何かしたいって、そう思って…―」

ペルラさんの瞳が惑うように揺れる。

(ペルラさん……)

彼の気持ちを思い、私の胸が締めつけられる。

○○「……ペルラさん」

ペルラ「○○?」

にっこりと笑いかけると、彼は目を丸くした。

しっかりとペルラさんの顔を見て、私は口を開く。

○○「仮装や街の飾りつけ、それにお店の準備は全部……。 今日までケナルのウィル王子や、ロトリアの皆さんが頑張ってきたものなんですよ」

ペルラ「……」

しばらくの沈黙の後、ペルラさんはつぶやくように声を出す。

ペルラ「皆が一生懸命考えて……いいものにしようとしてるのか」

彼の視線が、テーブルの上に置かれたお菓子に向けられる。

ペルラ「飾りも、仮装も、このお菓子ひとつひとつにも……。 ひとりひとりの思いが詰まってるってこと?」

○○「……はい。そう思います」

ペルラ「……」

私に向き直った彼は、綺麗な笑みを浮かべ……

ペルラ「……なら、ぼくも協力したい」

そう言って、自分の気持ちを確かめるように衣装に手を触れる。

ペルラ「この衣装、従者達が用意してくれたものだけど……。 ぼくもちゃんと自分で考えた衣装を着て、パレードに参加したい。 この収穫祭にふさわしいって心から思える……そんな衣装を。 そう思うのは、変?」

私はにっこりと微笑んで……

○○「いえ、素敵なことだと思います」

ペルラ「……ありがとう」

ペルラさんは、ますます明るい笑みを広げる。

胸を温かくする私の後ろから、従者さんが鼻をすする音が聞こえてきたのだった…―。

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