それからも私とペルラさんは、二人で活気づく収穫祭の街を巡り……
○○「たくさんもらっちゃいましたね」
すれ違う人達にお菓子をあげたりもらったりしながら、滞在する宿へと戻ってきた。
お茶の準備をする従者さんの傍らで、ペルラさんはもらったお菓子に目を向ける。
ペルラ「お菓子をくれなきゃ、悪戯するぞー……。 最初に聞いた時、お菓子をもらうのになんでそんな面倒なことするのかなって思ったけど……。 やってみたら、けっこう面白かった……かな」
くすりと笑った後、ペルラさんはかぼちゃのキャンディーを口の中に放り込む。
満足そうな彼の様子が嬉しくて、私もつられて笑みを浮かべた。
○○「そうですね。ペルラさん、上手でしたよ」
ペルラ「……。 お菓子をくれないと。悪戯しちゃうぞー……」
ソファに体を預けたまま、ペルラさんが手のひらを丸め、猫の真似をする。
○○「……あげませんって言ったら、どうしますか?」
ペルラ「きみに悪戯しなきゃいけないってこと? うーん……」
丸めた手を頬にあてながら、ペルラさんがしばし考え込む。
ペルラ「……ちょっと興味あるかも」
○○「!」
まるで悪戯を思いついた猫のような視線を送られ、胸がドキリと音を立てた。
ペルラ「……」
けれど彼の視線はやがて、私から逸れて……
ペルラ「でも……王族だってバレちゃった時は、ちょっと冷や冷やしたな」
その言葉に、先ほどあった出来事を思い出す。
収穫祭を回る途中で私達の素性がばれてしまい、大勢の街の人に囲まれてしまった。
○○「……はい。まさかあんなに大勢の人達が集まってくるなんて……」
ペルラさんの従者さんや見回りをしていたロトリアの兵士さん達に守られながら、なんとかここへ戻ってこられたものの……
○○「あの時は、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
助けてくれた従者さんに、改めてお礼を言う。
○○「私が、街を回りたいと誘ってしまったばかりに……」
ペルラの従者「とんでもありません」
従者さんはにこやかに笑いかけてくれた。
ペルラの従者「ペルラ様や○○様をお守りするのが私の役目ですから。 それに、ロトリアの兵士達も、お二人に収穫祭を楽しんでいただけて嬉しいと言っていました。 ですから誰も、迷惑だなんて思っていませんよ」
○○「……ありがとうございます」
従者さんの言葉にほっと胸を撫で下ろしていると、ペルラさんが静かに口を開いた。
ペルラ「ぼく達が楽しんで、嬉しい……」
そう確かめるようにつぶやいた後……
○○「ペルラさん?」
いつになく真剣な表情で、ペルラさんは私を見つめていた…―。