あちこちから、収穫祭を楽しむ街の人達の声が聞こえてくる。
ペルラさんの従者さんは、私達に気を使ってか、少し離れた場所で見守ってくれていた。
(なんだか、そんなふうに気を使われると……少しだけ恥ずかしいかも)
ペルラ「大丈夫? きみ、顔が赤いけど」
○○「……!」
不意にペルラさんに顔を覗き込まれて、さらに顔が熱くなる。
○○「な、なんでもないです……」
ペルラ「……別に、暑くはないよね? 体調でも悪い? 人が多くて、面倒な気分にはなるけど……ふぁ」
ペルラさんは、ぼんやりと周囲を眺め、あくびをする。
(意識しすぎ……かな)
そう思うとますます心が落ち着かず、私は会話を探して…―。
○○「……ペルラさん、どうして猫の仮装にしたんですか?」
ペルラ「ふぁ? んー……」
ペルラさんは、しばし考えるように天を仰ぐ。
ペルラ「猫の、仮装かあ……」
○○「え?」
何かを思いついたように、ぼそりとそうつぶやいたかと思えば…―。
ペルラ「にゃー」
○○「っ……ペルラ、さん?」
かわいらしい声でひと鳴きした後、ペルラさんはくすりと笑った。
ペルラ「どう? ぼく、猫っぽい?」
○○「えっと……はい」
突然の質問に面食らいながらも、柔らかな笑顔に心が緩む。
ペルラ「従者達に言われたんだ。 『ペルラ様には猫の衣装が似合うと思う』って。 きみもそう思う?」
珍しくおどけた様子で、手を猫のように丸くし、自分の頬をゆるりと撫でる。
(今の仕草、かわいいな)
○○「……はい! そう思います」
微笑み返すと、ペルラさんも嬉しそうにまた目を細めた。
ペルラ「外国での公務なんか、面倒だって思ってたけど……。 まあ……きみと一緒だし、いいかもね」
○○「……ペルラさん」
面倒くさがりのペルラさんが、心なしか生き生きとしている。
(嬉しいな……)
胸に広がっていく温かさを感じながら、かわいらしい猫を演じるペルラさんと二人……
(楽しいことが起こりそうな気がする)
私達は、収穫祭で賑わう街の大通りへと進むのだった…―。