幻惑の国・ロトリア 宙の月…―。
収穫祭への招待を受けた私は、賑わうロトリアの街へ足を運んでいた。
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ペルラ「へぇ……きみも収穫祭に招待されたんだ。 外出とか、面倒だよね……」
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(ペルラさん……ため息吐いてたけど、ちゃんと来てくれるかな)
かわいい飾りつけや漂うお菓子の匂いに心躍らせながら、私は宝石の国・マルガリタの王子であるペルラさんを待っていた。
ペルラ「あれ……早いね。待たせちゃった?」
○○「ペルラさん!」
久しぶりに会うペルラさんは、相変わらずとても端正な顔立ちをしている。
けれど……
(すごくかわいい……)
今回のための仮装なのか、猫耳がついた衣装を着るペルラさんに、目を奪われる。
くたりと曲がっている右耳が、いかにも気だるげで……
ペルラ「なんか、この服着るのに手間取っちゃって……ああ、思い出すだけでも面倒」
ペルラさんは相変わらずな様子で、短くため息を吐く。
ペルラの従者「お待たせしてしまい、大変申し訳ありません」
○○「いえ。私が早く来ただけですから、気にしないでください」
申し訳なさそうにしている従者さんに、慌てて返事をすると……
ペルラ「うん、じゃあ気にしない」
ペルラさんはそう言いながら、あくびを噛み殺した。
○○「ペルラさんも、パレードには出席するんですよね?」
ペルラ「うん……面倒だけどね」
○○「よかったです。ペルラさんのその格好、すごくかわいいですし……。 一緒に参加できて嬉しいです」
ペルラ「……そう?」
耳を触る仕草がまるで本物の猫みたいで、思わず笑みがこぼれる。
(けど、やっぱりあまり乗り気じゃないみたい?)
(せっかくなら、ペルラさんにも楽しんでもらいたいけど……)
少し考えた後、私は思い切って彼に声をかける。
○○「今日これから、少し街を見て回りませんか? 仮装している皆さんや、街の飾りつけを見るだけでも楽しいと思いますよ」
ペルラ「仮装かぁ……」
ペルラさんが目を閉じ、わずかに考え込むような素振りを見せる。
(やっぱり、嫌かな……?)
すると…―。
ペルラ「うーん……まぁ、きみが一緒なら別にいいよ」
少し面倒そうにしながらも、ペルラさんはわずかに口角を上げながら答えてくれたのだった…―。