やがて光が薄れ、次にホープが目を開くと…-。
??「夢王様!」
??「夢王様、万歳!!」
ライト「ありがとう。皆に夢溢れるよう……私のすべては、この世界のために」
白のバルコニーで、ライトが大勢の民に向かい手を振っている。
その指には、ホープが〇〇に渡した夢王の指輪が嵌まっていた。
ホープ「夢王……だと?」
(なんだ……これは)
(こんな記憶は…-)
民の歓声を浴びるライトの後ろでは、自分と〇〇が誇らしげに彼を見守っている。
やがてライトが後ろを振り向くと、二人は幸せそうに微笑んで……
ホープ「人気者だな、夢王様」
ライト「もう、からかわないで。毎回すごく緊張するんだから…-」
ホープ「大丈夫だ。お前が失敗しても、上手く助けてやるから」
ライト「……君に頼ってばかりっていうのも、僕としてはなんとかしたいんだけどね」
ホープ「いいじゃないか。 一人で抱え込むな。俺達はいつもお前の傍にいる」
ホープの言葉に同意するように、〇〇も柔らかく目を細める。
ホープ「3人一緒の方が、大きな夢を見られるだろう?」
ライト「……ありがとう、ホープ」
そしてライトは、再び群衆に向かい手を振り始めた。
憂いなど何もない、晴れやかな表情で…-。
ホープ「こんなものは、ない…-。 こんな光景はありえない。 俺は……いったい何を見ているんだ!!」
―――――
幼いホープ『忘れた夢、失った夢、胸に秘めた夢……それは誰もが持っているもの』
―――――
ホープ「失った……夢……?」
ホープの声に応えるように、光の粒がふわりと彼の周りを舞う。
やがてその粒子が折り重なり、幼いホープの姿を形作っていく…-。
幼いホープ「……」
ホープ「お前は…-」
幼いホープ「これは……俺が失った夢。 そして、ライトが失った夢でもある。 俺達は……同じ夢を見ていた」
ホープ「……」
呆然とするホープの耳に、鳴り止むことのない歓声が響く。
トロイメアの民「夢王様! 夢王様!!」
ホープ「違う…-」
モゼル「夢王様へ、我々も今後ますますの忠誠を」
バレッチ「すべては夢溢れる未来のために!」
ホープ「……っ」
ホープが夢を奪った家臣……モゼルとバレッチが、ライトに深く頭を下げる。
バレッチの表情は、ライトを手にかけた時の醜悪さは欠片もなく……
心から主のために尽くそうとする、忠義厚い家臣のものだった。
ホープ「違う。そいつらは……汚い奴らだ」
―――――
襲撃者『夢王の指輪を奪い、俺達がすべてを手に入れるんだ!』
バレッチ『私はトロイメアを守っただけだ! この偽物の王を弑してな!』
―――――
ホープ「あいつらは……欲深く、醜悪で、救いようのない奴らなんだ!! 何度も俺の大切な人を奪って……ライトの思いを踏みにじって! なのに、そんな奴らを…-」
―――――
ライト『でも、それでも僕は信じたい……人が持つ、光や優しさを』
〇〇『皆が夢を見られる世界……怯えることなく、希望を持てる世界を』
―――――
ホープ「あいつらは……救いたいと、願うんだ。 どうして…-」
幼いホープが、ホープの手をそっと握る。
幼いホープ「……俺達は、傷つきすぎた。 だから、気づくことができなかった」
ホープ「……気づく?」
民の前で凛と立つライトに視線を注いだまま、ホープはぽつりとつぶやいた。
やり場のない思いを込めるように、幼いホープは手を握る力を強め……
幼いホープ「必死に目を凝らせば、手を伸ばせば……。 ううん、少し素直になるだけで、見つけられたかもしれない」
ホープ「何を、言っている」
ゆっくりと、ホープの視線が移動する。
幼いホープを映した彼の瞳は、ひどく悲しい色を湛えていた。
幼いホープ「……行こう」
重なった手から光がこぼれ出し、ホープ達を包み込む。
白い光に体が溶け込んでいくにつれ、人々の歓声も……兄妹の笑い声も、消えていった。