光はさながら星のように輝き、闇に覆われた空間で儚げな煌めきをこぼしている。
ホープ「光…-」
その光の方へ、ホープはおもむろに歩き出そうとした。
ライトから受けた傷の痛みはもうないが、足が鉛のように重く、歩くことすらままならない。
ホープ「……っ」
それでもホープは、一心に微かな光を追い求めた。
(ライト……〇〇……)
目を細めれば、光がにじみ、ちらちらと揺らめく。
(俺は……この光を知っている)
懐かしい気配に胸を絞られながら、もがくように歩き、やっと光に手が届きそうになった時…-。
ホープ「……!」
掴もうとしていた光が四方に弾け、そのまばゆさに目を閉じる…-。
…
……
白い光がだんだんに薄れていき、その中でホープはゆっくりと目を開く。
ホープ「……ここは…-」
甘く懐かしい感覚が、胸に一気に押し寄せる。
ホープ「……!!」
柔らかな陽光が花々を揺らす、トロイメアの城…-。
その中庭で、顔立ちの同じ二人の少年が、橋の上から池を眺めていた。
幼いライト「綺麗だね」
幼いホープ「ああ」
それはまぎれもなく幼い頃の自分と、双子の兄であるライトだというのに…-。
ホープ「まさか…-」
胸の内でさまざまな思いが絡み合い、ホープは狼狽する。
ホープ「……過去のトロイメア……なのか?」
ホープも一度、過去のトロイメアを〇〇達に見せたことはあった。
(夢の残滓? いや……)
(そう呼ぶにしては、ひどく幸せな…-)
幼いライト「早く、生まれないかなあ」
幼いホープ「まだだって、お医者様が言ってただろう?」
幼いライト「そうだけど……早く会いたいじゃないか」
幼いホープ「無理をして、母上に何かあったらどうするんだよ」
幼いライト「でも…-」
少し口を尖らせるライトを見て、幼いホープがくすりと笑う。
ホープ「そうだ、これは……あいつが生まれる前の…-」
太陽の光が、池の水面をきらきらと輝かせる。
その光景にまぶしげに目を細めた後、幼いライトが口を開いた。
幼いライト「ねえ、ホープ。 僕達は、どうして双子に生まれたんだろう」
幼いホープ「さあ。でも、別におかしなことじゃないだろう?」
幼いライト「そうなんだけど…-」
しばらく考え込んだ後、ライトは嬉しそうに幼いホープの顔を覗き込んだ。
幼いライト「きっと、喜びや悲しみを分け合うためじゃないかな? 嬉しい時はもっと嬉しくなって、悲しい時は半分こできるように」
幼いホープ「ライトはいつも、前向きだよね」
幼いライト「えー? そうかなあ……」
幼いホープ「でも……俺も、そうだったらいいなって思う」
幼いライト「! ……うん。俺達はいつだって、たとえ離れていたって……思いをわかり合える。 世界でたった二人だけの、兄弟だから」
幼いホープ「うん。それでこれからは、生まれてくる子も一緒だ」
二人が幸せそうに笑い合う。
その光景を、ホープはただ静かに見つめていた。
ホープ「……」
(あの頃は、ライトの考えていることが手に取るようにわかった)
(ライトもきっと同じだっただろう)
(なのに……)
いつから、すれ違うようになってしまったのか…-。
もう戻れない過去に思い馳せたその時、不意に幼い自分と視線がぶつかった。
幼いホープ「来たんだね」
気づけば、ライトの姿がいつの間にか消えている。
戸惑いは未だあったが、ホープは静かに幼い自分に問いかけた。
ホープ「……ここは、なんだ。 俺は果てたはずだ。今わの際の走馬灯にしては、遅いだろう」
すると、幼いホープは切なげな笑みを浮かべた。
幼いホープ「夢の残滓……君が作りだしたものと似ているけれど、少し違う。 忘れた夢、失った夢、胸に秘めた夢……それは誰もが持っているもの。 彼らにも…-」
言い終わらないうちに、幼いホープが光をまとう。
ホープ「待て……!」
やがて再び辺りに光が満ちて、ホープの体を包み込んだ…-。