第2話 何も知らない頃

光はさながら星のように輝き、闇に覆われた空間で儚げな煌めきをこぼしている。

ホープ「光…-」

その光の方へ、ホープはおもむろに歩き出そうとした。

ライトから受けた傷の痛みはもうないが、足が鉛のように重く、歩くことすらままならない。

ホープ「……っ」

それでもホープは、一心に微かな光を追い求めた。

(ライト……〇〇……)

目を細めれば、光がにじみ、ちらちらと揺らめく。

(俺は……この光を知っている)

懐かしい気配に胸を絞られながら、もがくように歩き、やっと光に手が届きそうになった時…-。

ホープ「……!」

掴もうとしていた光が四方に弾け、そのまばゆさに目を閉じる…-。

……

白い光がだんだんに薄れていき、その中でホープはゆっくりと目を開く。

ホープ「……ここは…-」

甘く懐かしい感覚が、胸に一気に押し寄せる。

ホープ「……!!」

柔らかな陽光が花々を揺らす、トロイメアの城…-。

その中庭で、顔立ちの同じ二人の少年が、橋の上から池を眺めていた。

幼いライト「綺麗だね」

幼いホープ「ああ」

それはまぎれもなく幼い頃の自分と、双子の兄であるライトだというのに…-。

ホープ「まさか…-」

胸の内でさまざまな思いが絡み合い、ホープは狼狽する。

ホープ「……過去のトロイメア……なのか?」

ホープも一度、過去のトロイメアを〇〇達に見せたことはあった。

(夢の残滓? いや……)

(そう呼ぶにしては、ひどく幸せな…-)

幼いライト「早く、生まれないかなあ」

幼いホープ「まだだって、お医者様が言ってただろう?」

幼いライト「そうだけど……早く会いたいじゃないか」

幼いホープ「無理をして、母上に何かあったらどうするんだよ」

幼いライト「でも…-」

少し口を尖らせるライトを見て、幼いホープがくすりと笑う。

ホープ「そうだ、これは……あいつが生まれる前の…-」

太陽の光が、池の水面をきらきらと輝かせる。

その光景にまぶしげに目を細めた後、幼いライトが口を開いた。

幼いライト「ねえ、ホープ。 僕達は、どうして双子に生まれたんだろう」

幼いホープ「さあ。でも、別におかしなことじゃないだろう?」

幼いライト「そうなんだけど…-」

しばらく考え込んだ後、ライトは嬉しそうに幼いホープの顔を覗き込んだ。

幼いライト「きっと、喜びや悲しみを分け合うためじゃないかな? 嬉しい時はもっと嬉しくなって、悲しい時は半分こできるように」

幼いホープ「ライトはいつも、前向きだよね」

幼いライト「えー? そうかなあ……」

幼いホープ「でも……俺も、そうだったらいいなって思う」

幼いライト「! ……うん。俺達はいつだって、たとえ離れていたって……思いをわかり合える。 世界でたった二人だけの、兄弟だから」

幼いホープ「うん。それでこれからは、生まれてくる子も一緒だ」

二人が幸せそうに笑い合う。

その光景を、ホープはただ静かに見つめていた。

ホープ「……」

(あの頃は、ライトの考えていることが手に取るようにわかった)

(ライトもきっと同じだっただろう)

(なのに……)

いつから、すれ違うようになってしまったのか…-。

もう戻れない過去に思い馳せたその時、不意に幼い自分と視線がぶつかった。

幼いホープ「来たんだね」

気づけば、ライトの姿がいつの間にか消えている。

戸惑いは未だあったが、ホープは静かに幼い自分に問いかけた。

ホープ「……ここは、なんだ。 俺は果てたはずだ。今わの際の走馬灯にしては、遅いだろう」

すると、幼いホープは切なげな笑みを浮かべた。

幼いホープ「夢の残滓……君が作りだしたものと似ているけれど、少し違う。 忘れた夢、失った夢、胸に秘めた夢……それは誰もが持っているもの。 彼らにも…-」

言い終わらないうちに、幼いホープが光をまとう。

ホープ「待て……!」

やがて再び辺りに光が満ちて、ホープの体を包み込んだ…-。

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